オルガノイドを用いた臓器置換術の展望

多能性幹細胞より立体的な器官の誘導を試みる研究の多くは、器官発生過程で生じる多細胞間の時空間相互作用を人為的に再現するアプローチが取られてきた。すなわち、胚性幹細胞(ES)細胞や人工誘導性多能性幹(iPS)細胞などの培養系において、胎児期における器官形成で生じるキーイベントを再構成することによって、「自己組織化(Self-organization)」を刺激することを通じて中枢神経系や消化管を始めとしてさまざまなオルガノイド創出が報告されてきた。われわれのグループでも、肝臓創出を目指す多能性幹細胞研究において、血管、神経、間質細胞、免疫細胞といった恒常性に必須の役割を担う多細胞系からなる複雑なオ...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 58; no. Supplement; p. s104_1
Main Author 武部, 貴則
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2023
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.58.Supplement_s104_1

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Summary:多能性幹細胞より立体的な器官の誘導を試みる研究の多くは、器官発生過程で生じる多細胞間の時空間相互作用を人為的に再現するアプローチが取られてきた。すなわち、胚性幹細胞(ES)細胞や人工誘導性多能性幹(iPS)細胞などの培養系において、胎児期における器官形成で生じるキーイベントを再構成することによって、「自己組織化(Self-organization)」を刺激することを通じて中枢神経系や消化管を始めとしてさまざまなオルガノイド創出が報告されてきた。われわれのグループでも、肝臓創出を目指す多能性幹細胞研究において、血管、神経、間質細胞、免疫細胞といった恒常性に必須の役割を担う多細胞系からなる複雑なオルガノイド創出法を報告している。さらに、肝胆膵領域を一括して再生するという多臓器再生という概念を生み出すことなどを通じて、器官機能再建を目指す技術開発を展開してきた。本講演では、オルガノイドを用いた臓器機能置換など臨床医学への実質的還元を目指す新潮流、オルガノイド医学(Organoid Medicine)研究の最前線について議論したい。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.58.Supplement_s104_1