妊娠後期に腎後性急性腎障害となり緊急帝王切開となった腎移植患者の一例

【症例提示】31歳、女性。原因不明(慢性腎炎症候群の疑い)の末期腎不全で23歳時に当センターで母親をドナーとする血液型適合生体腎移植を受けた。29歳時に結婚、挙児希望があり、CKD G2TA1、降圧薬単剤使用下で血圧 120 mmHg前後と安定しており可能と判断した。タクロリムス(グラセプター)4 mg/日は継続、ミコフェノール酸モフェチルはアザチオプリン 50 mg/日に変更、9か月後に一度の自然妊娠と流産を経たが再度自然妊娠し、その後の妊娠経過は順調であった。20週を超えても血圧上昇や蛋白尿を認めず移植腎機能は安定、胎児発育も正常であったが、37週4日目の移植センター定期受診時、血清Crが...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 55; no. Supplement; p. 366_2
Main Authors 小山, 勇, 岡田, 克也, 岡田, 浩一, 井上, 勉, 梅木, 恵理, 田丸, 俊輔
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2020
The Japan Society for Transplantation
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Summary:【症例提示】31歳、女性。原因不明(慢性腎炎症候群の疑い)の末期腎不全で23歳時に当センターで母親をドナーとする血液型適合生体腎移植を受けた。29歳時に結婚、挙児希望があり、CKD G2TA1、降圧薬単剤使用下で血圧 120 mmHg前後と安定しており可能と判断した。タクロリムス(グラセプター)4 mg/日は継続、ミコフェノール酸モフェチルはアザチオプリン 50 mg/日に変更、9か月後に一度の自然妊娠と流産を経たが再度自然妊娠し、その後の妊娠経過は順調であった。20週を超えても血圧上昇や蛋白尿を認めず移植腎機能は安定、胎児発育も正常であったが、37週4日目の移植センター定期受診時、血清Crが上昇(0.83 → 1.65、eGFR 65.6 → 30.9)した。超音波検査で移植腎に水腎症を認め、妊娠に関連した尿管狭窄による腎後性急性腎障害の診断で同日産科に緊急入院となり、翌日帝王切開で3100gの元気な男児を出産した。出産後、腎機能の回復が遅れCTでの確認を要したが、子宮復古と水腎症の消失に伴い腎機能も改善傾向となった。【考察】自己腎と同様に移植腎でも妊娠中には軽度から中程度の腎盂拡張所見を認めることは稀ではなく、一部は腎機能障害を生じる。単腎であるレシピエントは容易に急性腎障害となるため、尿管ステントや腎瘻が必要となる場合も報告されており十分な注意が必要である。
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.55.Supplement_366_2