当科におけるアルコール性肝障害に対する肝移植後再飲酒に関する検討

【背景】アルコール性肝硬変に対する肝移植では,術後再飲酒リスクをいかに術前評価するかが課題であり,術前禁酒期間半年以上やHRAR scale2以下が移植適応基準として用いられている.【方法】2010~2019年に当科でアルコール性肝硬変に対する肝移植を施行した5例(生体4例, 脳死1例)中, 術後グラフト不全で死亡した1例を除く4症例(生体3例, 脳死1例)について後方視的に検討した.【結果】男:女=3:1, 年齢29~56歳, MELD score:17~43であり,非飲酒群は2例(生体1例,脳死1例),再飲酒群は2例(生体2例)であった.非飲酒/再飲酒群の平均移植前飲酒期間・禁酒期間・HR...

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Published inJapanese Journal of Transplantation Vol. 55; no. Supplement; p. 277_2
Main Authors 大宮, 悟志, 津川, 大介, 小松, 昇平, 柳本, 泰明, 味木, 徹夫, 外山, 博近, 権, 英寿, 木戸, 正浩, 宗, 慎一, 田中, 基文, 白川, 幸代, 浅利, 貞毅, 蔵満, 薫, 寺井, 祥雄, 福本, 巧
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本移植学会 2020
The Japan Society for Transplantation
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ISSN0578-7947
2188-0034
DOI10.11386/jst.55.Supplement_277_2

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Summary:【背景】アルコール性肝硬変に対する肝移植では,術後再飲酒リスクをいかに術前評価するかが課題であり,術前禁酒期間半年以上やHRAR scale2以下が移植適応基準として用いられている.【方法】2010~2019年に当科でアルコール性肝硬変に対する肝移植を施行した5例(生体4例, 脳死1例)中, 術後グラフト不全で死亡した1例を除く4症例(生体3例, 脳死1例)について後方視的に検討した.【結果】男:女=3:1, 年齢29~56歳, MELD score:17~43であり,非飲酒群は2例(生体1例,脳死1例),再飲酒群は2例(生体2例)であった.非飲酒/再飲酒群の平均移植前飲酒期間・禁酒期間・HRAR scaleはそれぞれ16.5/8年, 33.5/15か月, 2/1であり,移植前飲酒期間や禁酒期間に有意差は認めず,HRAR scaleは両群ともに2以下であった.再飲酒症例2例とも移植後4年で肝機能障害等による入退院を繰り返し,1例は再飲酒に伴う肝不全で術後8年2か月目に死亡した.【考察】当科における再飲酒群は非飲酒群より若年傾向であり,HRAR scaleや移植前飲酒・禁酒期間から術前に再飲酒を予測することは困難であった.今後はアルコール性肝硬変に対する移植症例の増加が予想され,移植前から継続した精神科通院による日常生活や家族サポートへの介入など積極的な取り組みが必要であると考える.
ISSN:0578-7947
2188-0034
DOI:10.11386/jst.55.Supplement_277_2