急性期大腿骨近位部骨折術後患者のプロトコルアップデートに向けた取り組み

【目的】 大腿骨近位部骨折 (以下HF)患者の術後1年時の歩行能力の回復に起因する因子として術後2週間後の歩行能力が挙げられ、これは自宅復帰に繋がる要因であることも知られている。これに加え術後翌日から移動能力の評価として実施可能である評価Cumulated Ambulation Score (以下CAS)があり、市ノ瀬らは術後3日間のCAS (3day-CAS)と術後2週間後の歩行能力の関連性を示唆している。本研究は先行研究を踏まえ、当院急性期整形外科病棟におけるHF術後患者の現状をアウトカム集計から分析し、プロトコルをアップデートする事を目的とした。 【方法】 本研究は後ろ向き観察研究であり...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2024; p. 117
Main Authors 宮原, 史子, 田鍋, 拓也, 柴藤, 舞, 森山, 武蔵
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2024
Kyushu Physical Therapy Association
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2024.0_117_1

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Summary:【目的】 大腿骨近位部骨折 (以下HF)患者の術後1年時の歩行能力の回復に起因する因子として術後2週間後の歩行能力が挙げられ、これは自宅復帰に繋がる要因であることも知られている。これに加え術後翌日から移動能力の評価として実施可能である評価Cumulated Ambulation Score (以下CAS)があり、市ノ瀬らは術後3日間のCAS (3day-CAS)と術後2週間後の歩行能力の関連性を示唆している。本研究は先行研究を踏まえ、当院急性期整形外科病棟におけるHF術後患者の現状をアウトカム集計から分析し、プロトコルをアップデートする事を目的とした。 【方法】 本研究は後ろ向き観察研究であり、全ての評価項目と患者属性は診療録より取得した。対象は65歳以上で2022年10月1日~2023年8月31日の期間に大腿骨頸部骨折、転子部骨折術後患者89例 (除外対象:多発外傷、術後免荷、病前から歩行困難)で、当院急性期整形外科病棟の在棟日数を考慮し、メインアウトカムは術後10日目の歩行能力とし、歩行器監視で10m以上可能群 (以下可能群)と歩行器介助歩行以下群 (以下不可群)に群分けした。術後初期の移動能力の評価として3day-CASを、その他年齢、性別、認知症の有無 (HRS-R20点以上/未満)、受傷前の移動能力 (杖、独歩/歩行器)、転入元、骨折型、術式、GNRIの単変量解析を行い、有意差を認めた変数に関して、多重ロジスティック回帰分析を行った。また3day-CASはROC分析にてカットオフ値を算出した。 【結果】 術後10日後の歩行レベルは可能群35例、不可群54例であった。単変量解析では2群間で年齢、術前歩行能力、認知症の有無、3day-CAS (p<0.05)に有意差を認め、その後の多重ロジスティック回帰分析では、①術前歩行能力 (p<0.05)、②認知症の有無 (p<0.01)、③3day-CAS (p<0.01)に有意差が認められ、オッズ比はそれぞれ①7.15(95%CI:1.36~37.5)②0.19(95%CI:0.06~0.58)③1.7(95%CI:1.19~2.42)であった。3day-CASのカットオフ値は4点であった。 【考察】 統計解析の結果、先行研究同様に当院でもHF術後10日目の歩行器歩行の可否判断の一つに、3day-CASが有用であることが裏付けられた。これは可変性があり、理学療法の介入が得点に影響を与える点においても臨床上有用な指標と考えられ、術後早期から段階的に抗重力活動や歩行を実施していく事の重要性とその為のプロトコルの必要性が示唆された。また、今回認知症の有無や受傷前歩行レベルも抽出され,これらもプロトコルへ反映させる必要があると考えた。そこで認知症があり、受傷前歩行レベルが歩行器レベルの患者に関しては、歩行能力改善の前段階として、離床時間の拡大や、食事、トイレなどのADL獲得を軸とした別プロトコルを作成する事で、各患者のベースラインに応じた到達目標の設定、介入が可能となるのではないかと考えた。 【結語】 今後これらプロトコルを運用し、効果判定を行い、ブラッシュアップをしていく必要があると考える。 【倫理的配慮】本研究はヘルシンキ宣言に則り対象者における個人情報の保護などに十分配慮し、匿名かした上で実施した。
Bibliography:O17-1
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2024.0_117_1