交互脈を呈した心不全患者に毛細血管再充満時間を指標に運動療法を進めた一例

【目的】 交互脈は、左室機能障害による重症心不全の末期に出現する現象であると認識されている。交互脈とは、RR間隔が一定で動脈拍動が強弱交互になり、脈拍毎の収縮期血圧の差が20 mmHg以上ある場合に触診でそれと判断できるとされる。循環器疾患の運動療法場面においては,運動療法前、運動療法中、運動療法後など必要時にバイタルサインの変化をフォローしていく。しかしながら、交互脈を認める場合は血圧の数値に整合性を認めない場合や、心拍数と脈拍数が同数でないために、運動療法中の負荷量が過負荷なのか否かの判断に苦慮する場合がある。さらには,先行研究においても交互脈を有する症例の運動療法に着手した報告は見当たら...

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Published inKyushu physical therapist Congress Vol. 2024; p. 106
Main Authors 今永, 匠, 若菜, 理, 原口, 和希, 古澤, 由唯, 古市, 和希, 古賀, 久士, 太田, 頌子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 公益社団法人 日本理学療法士協会 九州ブロック会 2024
Kyushu Physical Therapy Association
Subjects
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ISSN2434-3889
DOI10.32298/kyushupt.2024.0_106_4

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Summary:【目的】 交互脈は、左室機能障害による重症心不全の末期に出現する現象であると認識されている。交互脈とは、RR間隔が一定で動脈拍動が強弱交互になり、脈拍毎の収縮期血圧の差が20 mmHg以上ある場合に触診でそれと判断できるとされる。循環器疾患の運動療法場面においては,運動療法前、運動療法中、運動療法後など必要時にバイタルサインの変化をフォローしていく。しかしながら、交互脈を認める場合は血圧の数値に整合性を認めない場合や、心拍数と脈拍数が同数でないために、運動療法中の負荷量が過負荷なのか否かの判断に苦慮する場合がある。さらには,先行研究においても交互脈を有する症例の運動療法に着手した報告は見当たらない。今回、拡張型心筋症を罹患し集中治療室から一般病棟管理の中で交互脈を認めていた症例に対して、毛細血管再充満時間 (Capillary Refill time 以下;CRT)を指標に運動療法を進めた一症例を報告する。 【症例紹介】 40歳代前半男性、身長173 ㎝、入院時体重61.2 ㎏で、現病歴は、X-1に動機や息切れの症状を認め,安静でも持続していたためにX日当院受診し急性心不全の診断となった。来院時の経胸壁心臓エコー検査では、LVDd/LVDsが63/56 mmと左室拡大を認め、 (LVEF)が20%と左室収縮機能の低下を認め、入院後の検査にて拡張型心筋症の診断となった。 【経過】 X+2に心不全増悪状態となり集中治療室へ入室となった。集中治療室入室中は、X+2よりMechanical Circulatory Support (以下;MCS)にて管理が施されたが、観血的動脈圧測定から得られた動脈圧波形では交互脈が確認された。実際に脈拍数は、心拍数×1/2だった。MCS抜去後の収縮期血圧は、70台前半と低値で推移したものの、CRT時間が遅延することはなかったために、有害事象を起こすことなく運動療法の強度と時間を適宜上方修正することができた。最終的に心肺運動負荷試験を行いX+48日に自宅退院となった。 【考察】 低心機能を有する心不全患者は収縮期血圧が低値であることも多く、日常診療時に用いられるガイドラインが指標となりにくい場合も存在する。また、本症例では重症心不全患者に認める所見とされる交互脈も認めていた。よって、運動療法を処方する上での指標に一般的に使用されるバイタルサインのみでは運動療法の安全性や、運動強度の漸増や漸減などの判断が難しいことが考えられた。CRTは、爪先を短時間圧迫して爪先の色調が戻るまでの時間を測るという簡易的な検査であり末梢循環の評価に用いられる。日常臨床で測定するバイタルサインに加えて、CRTを用いて実測値の異常や前日からの時間延長がないか確認しながら運動療法を行ったことが安全性の担保に繋がったと考える。また、交互脈などを認める際には心拍処方は使用できないものの、CRTは交互脈の症例においても実施可能であり、今後の臨床応用にも有用と考える。 【倫理的配慮】今回の報告に際して、個人が特定されないように配慮し、個人情報を使用させて頂く事を文書にて本人とご家族に説明し同意を頂いた。
Bibliography:O6-4
ISSN:2434-3889
DOI:10.32298/kyushupt.2024.0_106_4