滑りやすい床面歩行における健常成人男性の滑り方向パターン

【はじめに】 我々のグループは,第42回日本理学療法学術大会にて,速歩きでの滑り方向の検討を行った.その結果,転倒に至る滑り方向は前方滑りのみであった.しかし日常生活では濡れた床面など通常歩行時に滑りが発生する場合も多い.そこで今回は通常歩行時における転倒に至る滑り方向の検討を行った. 【対象】 形態異常や運動器疾患を有さない成人男性10名(平均年齢29.3歳)を対象とした.対象者には,本研究の安全性とリスクを十分に説明し,書面で同意を得た.この研究は当院の倫理審査委員会の承認を得た. 【方法】 三次元動作解析装置と床反力計6台を使用した.臨床歩行分析研究会の規定に従い反射マーカーを身体の15...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 125
Main Authors 大谷地, 花奈, 長岡, 輝之, 高野, 義隆, 甫仮, 愛美, 熊澤, さゆみ, 関根, 裕之, 古川, 勝弥, 徳永, 由太, 江原, 善弘, 小林, 量作
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2011
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Abstract 【はじめに】 我々のグループは,第42回日本理学療法学術大会にて,速歩きでの滑り方向の検討を行った.その結果,転倒に至る滑り方向は前方滑りのみであった.しかし日常生活では濡れた床面など通常歩行時に滑りが発生する場合も多い.そこで今回は通常歩行時における転倒に至る滑り方向の検討を行った. 【対象】 形態異常や運動器疾患を有さない成人男性10名(平均年齢29.3歳)を対象とした.対象者には,本研究の安全性とリスクを十分に説明し,書面で同意を得た.この研究は当院の倫理審査委員会の承認を得た. 【方法】 三次元動作解析装置と床反力計6台を使用した.臨床歩行分析研究会の規定に従い反射マーカーを身体の15箇所に貼付した.液体洗剤を入れて密封した摩擦が少なく滑りやすいポリエチレン製の袋を床反力計上に置き,滑り難い床面から滑り易い床面への通常歩行を模擬した.利き足が床反力計の手前2枚に接地するよう数回練習し,一人20試行計測を行った.被験者にはプレートが見えないよう下方を隠した眼鏡を装着し,真正面を注視させた.また,安全性を考慮し移動式免荷装置を使用した.第五中足骨のマーカーの移動方向により滑りを前方(前方内外側45度),側方(外側前後45度),後方(後方内外側45度)の3つに分けた.前方に滑ったのち側方へ滑った場合はどちらも1回として数えた.そのうち,滑りながら床反力計外に足が出たものを転倒とみた. 【結果】 滑りは200試行中336回見られ,前方155回,後方133回,側方48回であった.また,転倒とみたものは,前方31回,側方18回,後方0回であった. 【考察】 速歩きでの研究では転倒に至る滑りは前方のみで側方はなかった.速歩きでは踵接地時の水平応力が大きいため側方に滑る前に前方で転倒したと考えられる.しかし今回は速歩きに比べ,歩行スピードが遅いため持ちこたえられ,前方だけではなく側方滑りでの転倒が生じたと考えられる.前方滑りでの転倒31回は前方滑り155回のうちの20%であり,側方滑りでの転倒18回は側方滑り48回のうちの37.5%であった.そのことから,転倒に至る割合は前方より側方の方が多く,側方滑りの危険性が示唆された.今回の実験では,健常男性であっても摩擦係数が小さい路面では滑った場合持ちこたえることが困難なことが確認された.高齢者の転倒予防の観点では,筋力強化を行っても持ちこたえることは難しいと考えられるので,滑り易い床面への移動では,前方だけでなく側方への注意の促しが必要と考える.
AbstractList 【はじめに】 我々のグループは,第42回日本理学療法学術大会にて,速歩きでの滑り方向の検討を行った.その結果,転倒に至る滑り方向は前方滑りのみであった.しかし日常生活では濡れた床面など通常歩行時に滑りが発生する場合も多い.そこで今回は通常歩行時における転倒に至る滑り方向の検討を行った. 【対象】 形態異常や運動器疾患を有さない成人男性10名(平均年齢29.3歳)を対象とした.対象者には,本研究の安全性とリスクを十分に説明し,書面で同意を得た.この研究は当院の倫理審査委員会の承認を得た. 【方法】 三次元動作解析装置と床反力計6台を使用した.臨床歩行分析研究会の規定に従い反射マーカーを身体の15箇所に貼付した.液体洗剤を入れて密封した摩擦が少なく滑りやすいポリエチレン製の袋を床反力計上に置き,滑り難い床面から滑り易い床面への通常歩行を模擬した.利き足が床反力計の手前2枚に接地するよう数回練習し,一人20試行計測を行った.被験者にはプレートが見えないよう下方を隠した眼鏡を装着し,真正面を注視させた.また,安全性を考慮し移動式免荷装置を使用した.第五中足骨のマーカーの移動方向により滑りを前方(前方内外側45度),側方(外側前後45度),後方(後方内外側45度)の3つに分けた.前方に滑ったのち側方へ滑った場合はどちらも1回として数えた.そのうち,滑りながら床反力計外に足が出たものを転倒とみた. 【結果】 滑りは200試行中336回見られ,前方155回,後方133回,側方48回であった.また,転倒とみたものは,前方31回,側方18回,後方0回であった. 【考察】 速歩きでの研究では転倒に至る滑りは前方のみで側方はなかった.速歩きでは踵接地時の水平応力が大きいため側方に滑る前に前方で転倒したと考えられる.しかし今回は速歩きに比べ,歩行スピードが遅いため持ちこたえられ,前方だけではなく側方滑りでの転倒が生じたと考えられる.前方滑りでの転倒31回は前方滑り155回のうちの20%であり,側方滑りでの転倒18回は側方滑り48回のうちの37.5%であった.そのことから,転倒に至る割合は前方より側方の方が多く,側方滑りの危険性が示唆された.今回の実験では,健常男性であっても摩擦係数が小さい路面では滑った場合持ちこたえることが困難なことが確認された.高齢者の転倒予防の観点では,筋力強化を行っても持ちこたえることは難しいと考えられるので,滑り易い床面への移動では,前方だけでなく側方への注意の促しが必要と考える.
Author 熊澤, さゆみ
小林, 量作
長岡, 輝之
高野, 義隆
江原, 善弘
古川, 勝弥
関根, 裕之
徳永, 由太
甫仮, 愛美
大谷地, 花奈
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  fullname: 大谷地, 花奈
  organization: 新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部
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  fullname: 長岡, 輝之
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  fullname: 高野, 義隆
  organization: 新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部
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  fullname: 甫仮, 愛美
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  fullname: 熊澤, さゆみ
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  fullname: 関根, 裕之
  organization: 新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部
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  fullname: 古川, 勝弥
  organization: 新潟リハビリテーション病院リハビリテーション部
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  fullname: 徳永, 由太
  organization: 新潟医療福祉大学大学院PTS
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  fullname: 江原, 善弘
  organization: 新潟医療福祉大学医療技術学部義肢装具自立支援学科
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  fullname: 小林, 量作
  organization: 新潟医療福祉大学医療技術学部理学療法学科
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Copyright 2011 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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DOI 10.14901/ptkanbloc.30.0.125.0
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EISSN 2187-123X
EndPage 125
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ISSN 0916-9946
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Language Japanese
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MeetingName 関東甲信越ブロック理学療法士学会 第30回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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Notes P1-2-011
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PublicationCentury 2000
PublicationDate 2011
PublicationDateYYYYMMDD 2011-01-01
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  text: 2011
PublicationDecade 2010
PublicationTitle 関東甲信越ブロック理学療法士学会
PublicationTitleAlternate 関東甲信越ブロック理学療法士学会
PublicationYear 2011
Publisher 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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Snippet 【はじめに】 我々のグループは,第42回日本理学療法学術大会にて,速歩きでの滑り方向の検討を行った.その結果,転倒に至る滑り方向は前方滑りのみであった.しかし日常生活では濡れた床面など通常歩行時に滑りが発生する場合も多い.そこで今回は通常歩行時における転倒に至る滑り方向の検討を行った. 【対象】...
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SourceType Publisher
StartPage 125
SubjectTerms 滑り
滑り方向
転倒予防
Title 滑りやすい床面歩行における健常成人男性の滑り方向パターン
URI https://www.jstage.jst.go.jp/article/ptkanbloc/30/0/30_0_125/_article/-char/ja
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