視覚刺激としての台が立ち上がり時の足圧中心の移動に与える影響について

【目的】視覚刺激としての台を用いた立ち上がり時の効果的な台の設置位置を調査した我々の先行研究では,坐位姿勢の膝より前方0~20cm上方15~30cmの空間内では,前方20cm上方15cmに台を設置する条件が,立ち上がり動作時の足圧中心をより前方に導くことができ,主観的にもより立ち上がりやすくなるという結果が得られ、台は遠く低く設置した方が効果的であるという傾向がみられた. しかし,限りなくより遠くより低く台を設置することでさらに効果が上がるとは考えにくく,今回はその限界点を検証することを目的とした. 【方法】研究の趣旨に同意の得られた健常男女10名(男性5名,女性5名)を対象とした.平均年齢は...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 29; p. 190
Main Authors 谷口, 拓也, 袴田, さち子, 野中, 美里, 木野田, 典保
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2010
Subjects
Online AccessGet full text
ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.29.0.190.0

Cover

More Information
Summary:【目的】視覚刺激としての台を用いた立ち上がり時の効果的な台の設置位置を調査した我々の先行研究では,坐位姿勢の膝より前方0~20cm上方15~30cmの空間内では,前方20cm上方15cmに台を設置する条件が,立ち上がり動作時の足圧中心をより前方に導くことができ,主観的にもより立ち上がりやすくなるという結果が得られ、台は遠く低く設置した方が効果的であるという傾向がみられた. しかし,限りなくより遠くより低く台を設置することでさらに効果が上がるとは考えにくく,今回はその限界点を検証することを目的とした. 【方法】研究の趣旨に同意の得られた健常男女10名(男性5名,女性5名)を対象とした.平均年齢は28±7歳,平均身長は162±7.5cmであった.まず「台」を計測し,次に「台あり」を以下の3条件でランダムに計測した.足尖から1)前方30cm上方45cm,2)前方40cm上方35cm,3)前方50cm上方25cm.開始肢位は,膝関節屈曲90°となるよう座面の高さを設定し,上肢は胸の前で組むようにした. 体幹前傾時に足圧中心が最も前方へ移動した座標の支持基底面前後長に対する距離の割合を,重心動揺計を用いて3回計測し平均値を算出した.また「台」に対して,「台あり」の各条件の主観的立ち上がり易さも5件法を用いて確認した。 【結果】足圧中心の前方移動量は,「台」57.9±8.7%,「台あり」1)58.9±6.4%,2)58.3±9.4%,3)55.7±8.9%であった.主観的な評価は、全ての条件で変わらないと答えたものが一番多かった。 【考察】本研究の3条件の設定範囲では、台がより遠くより低く設置されることで、足圧中心の前方移動量は減少した。先行研究と本研究から,視覚刺激としての台の最も効果的と考えられる設置位置は,坐位における膝関節より前方20cm上方15cm付近であった.この位置までは足圧中心は前方に導かれ,主観的に立ち上がり易く感じるようになる.しかし,それより前方に台を設置すると足圧中心は次第に前方移動量が減少し,主観的な立ち上がりやすさには影響しなくなると考えられる. この傾向は、視覚的注意が身体アライメントに影響を与えたものと推察する。また、最も効果的と考えられる台の設定位置での計測結果は、柊らの報告による重心移動域の制限範囲と近い値であり、我々の結果と矛盾しないと思われる。
Bibliography:195
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.29.0.190.0