気候変動適応策としての農地を利活用した防災・減災の現状と課題

気候変動の影響を一因として,豪雨に伴う洪水等の自然災害が急増し,今後更に増加することが予想されている。甚大化する水災害へ備えることは,気候変動に対する適応策として不可欠な要素の 1 つである。これまで防災対策は,ダムや堤防等,人工構造物を利用したものが主流であったが,急増する自然災害に対し,現状の方策のみで対応していくことは困難であるという認識が広がりつつある。この状況に対し,生態系を活用した防災・減災(Ecosystem based Disaster Risk Reduction:Eco-DRR)に注目が集まっている。生態系を活用した防災対策は,人工構造物と組み合わせることでその機能を補完し...

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Published in地球環境 Vol. 28; no. 1; pp. 103 - 114
Main Author 大澤, 剛士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 国際環境研究協会 2023
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Summary:気候変動の影響を一因として,豪雨に伴う洪水等の自然災害が急増し,今後更に増加することが予想されている。甚大化する水災害へ備えることは,気候変動に対する適応策として不可欠な要素の 1 つである。これまで防災対策は,ダムや堤防等,人工構造物を利用したものが主流であったが,急増する自然災害に対し,現状の方策のみで対応していくことは困難であるという認識が広がりつつある。この状況に対し,生態系を活用した防災・減災(Ecosystem based Disaster Risk Reduction:Eco-DRR)に注目が集まっている。生態系を活用した防災対策は,人工構造物と組み合わせることでその機能を補完し,想定外の規模の災害に対しても有効性を発揮してくれること,さらには,維持コストの低減につながることも期待されている。本稿は,国内の約 13%を占める農地を防災インフラとして活用する可能性について,流域や都道府県,市町村といった広域スケールを対象とした既往研究及びケーススタディの紹介を通し,その基本的な考え方と有効性,課題について議論する。
ISSN:1342-226X
2758-3783
DOI:10.57466/chikyukankyo.28.1_103