膀胱尿管逆流症に対する内視鏡的逆流防止術の開発

雌成犬を用い膀胱尿管逆流症 (VUR) に対する内視鏡的手術術式を開発した. 15匹 (内5匹は死亡) に観血的に尿管口の12時の膀胱粘膜を切開し, 断端部を縫合しVURを作った. 術後1ヵ月目に全例にVURが作成されたことを確認後, 消化器用穿刺針を尿管口の6時の位置から約1.2cm離れた膀胱粘膜下に穿刺し, ヘパリン加の自己血液を粘膜が充分に腫脹し, 静注したインジゴカルミンの流出が鈍くなるまで注入した. 2, 10時の位置にも適時追加注入した. 抜針時にトロンビンとプロタミンとを少量ずつ注入し, 血液凝固を促し血液の膀胱内への漏出を防いだ. 手術は一側のみにし, 反対側は対照とした. 術...

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Published in日本泌尿器科學會雑誌 Vol. 77; no. 4; pp. 633 - 641
Main Authors 植村, 匡志, 栗田, 孝, 山本, 義憲, 郡, 健二郎, 秋山, 隆弘, 加藤, 良成, 片岡, 喜代徳, 朴, 英哲
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本泌尿器科学会 1986
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ISSN0021-5287
1884-7110
DOI10.5980/jpnjurol1928.77.4_633

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Summary:雌成犬を用い膀胱尿管逆流症 (VUR) に対する内視鏡的手術術式を開発した. 15匹 (内5匹は死亡) に観血的に尿管口の12時の膀胱粘膜を切開し, 断端部を縫合しVURを作った. 術後1ヵ月目に全例にVURが作成されたことを確認後, 消化器用穿刺針を尿管口の6時の位置から約1.2cm離れた膀胱粘膜下に穿刺し, ヘパリン加の自己血液を粘膜が充分に腫脹し, 静注したインジゴカルミンの流出が鈍くなるまで注入した. 2, 10時の位置にも適時追加注入した. 抜針時にトロンビンとプロタミンとを少量ずつ注入し, 血液凝固を促し血液の膀胱内への漏出を防いだ. 手術は一側のみにし, 反対側は対照とした. 術後約1ヵ月目にVURの治癒の有無を調べ, 未治癒時には再手術をした. 結果は, 10匹中3匹は1回の手術にて, 2匹は2回の, 2匹は3回の手術にて治癒をみたが, 3匹は2回の手術にて治癒せず, 未治癒群として経観した. 再発は平均観察期間14ヵ月の間に1例あり, 再手術にて治癒した. 水腎症等の合併症はなかった. 尿管膀胱移行部の組織像からVURが治癒したた理由を推察すると, 粘膜下の肥厚が膀胱壁内の尿管の長さを伸展させ, かつ尿管口を塞ぐためと思われた. そのため手術をする際重要なことは, 粘膜下の腫脹を確実に作ることであろう. 本術式は操作が簡単で, 繰返しの手術が可能であり, また重篤な合併症がないことから, 臨床応用も可能と考える.
ISSN:0021-5287
1884-7110
DOI:10.5980/jpnjurol1928.77.4_633