先住民族の自立と財産権制度 : カナダ先住民とBC条約交渉
土地(コモンズ)は先住民の文化・社会の基盤であり,先住民の土地利用は彼等独自の財産権の下で進化・発展してきた。先住民にとっての「自立」とは,先住民社会の変容を前提としつつ,先住民の財産権が現代社会の中でどのように翻訳され,実質的に機能するかという問題と密接に関係している。仮に,先住民が既存の国家体制の中に留まることを選択するのなら,当該国家の内部に先住民,非先住民の両者が供に許容できるような精巧な財産権が設定される必要がある。カナダ,BC州では90年代以降,州・連邦政府,各先住民族の間で,新たな財産権の設定をめぐる条約締結の動きが活発化してきた。現在,条約締結の過程に参入を表明しているのは数十...
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Published in | 林業経済研究 Vol. 45; no. 2; pp. 13 - 18 |
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Main Authors | , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
林業経済学会
01.10.1999
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Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0285-1598 2424-2454 |
DOI | 10.20818/jfe.45.2_13 |
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Summary: | 土地(コモンズ)は先住民の文化・社会の基盤であり,先住民の土地利用は彼等独自の財産権の下で進化・発展してきた。先住民にとっての「自立」とは,先住民社会の変容を前提としつつ,先住民の財産権が現代社会の中でどのように翻訳され,実質的に機能するかという問題と密接に関係している。仮に,先住民が既存の国家体制の中に留まることを選択するのなら,当該国家の内部に先住民,非先住民の両者が供に許容できるような精巧な財産権が設定される必要がある。カナダ,BC州では90年代以降,州・連邦政府,各先住民族の間で,新たな財産権の設定をめぐる条約締結の動きが活発化してきた。現在,条約締結の過程に参入を表明しているのは数十の先住民団体にのぼり,人口比でBC州先住民の約7割を代表するにいたっている。しかし,根強い反論が先住民内外から表出している現状もあり,BC条約が今後進展するか否かは依然微妙な状況にある。この小論では,BC条約の現状を現地での聞き取り調査を交えながら,特にBC条約の含意する問題が先住民の視点からどのように評価されるのかを整理し,伝統的な財産権が一つの国民国家の中に成立するための視角について議論する。 |
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ISSN: | 0285-1598 2424-2454 |
DOI: | 10.20818/jfe.45.2_13 |