両側同時人工膝関節全置換術の理学療法経過―片側人工膝関節全置換術との比較
【目的】 変形性膝関節症(以下膝OA)の多くは両側性であり,片側のみ手術で矯正された場合,歩行障害が残存するため,両側同時に人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行することがある. 両側同時TKA の利点は,麻酔,手術,理学療法が一度で終了するため総入院期間が短縮されることであり,欠点は,手術侵襲が大きく出血も多いため, 術後合併症が危惧されることである.両側同時TKAと片側TKAの術後理学療法の進行状況について比較した報告は少ない.今回,当院にて両側同時TKAを施行した3例と片側TKAを施行した22例を比較し,理学療法実施における注意点を検討した. 【方法】 2011年3月から2012年2月に...
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 198 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_198 |
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Summary: | 【目的】 変形性膝関節症(以下膝OA)の多くは両側性であり,片側のみ手術で矯正された場合,歩行障害が残存するため,両側同時に人工膝関節全置換術(以下TKA)を施行することがある. 両側同時TKA の利点は,麻酔,手術,理学療法が一度で終了するため総入院期間が短縮されることであり,欠点は,手術侵襲が大きく出血も多いため, 術後合併症が危惧されることである.両側同時TKAと片側TKAの術後理学療法の進行状況について比較した報告は少ない.今回,当院にて両側同時TKAを施行した3例と片側TKAを施行した22例を比較し,理学療法実施における注意点を検討した. 【方法】 2011年3月から2012年2月に当院にて両側同時あるいは片側TKAを施行した症例のうち,同意の得られた25例(両側3例,片側22例)を対象とした.それぞれの術後,離床,起立開始,T字杖歩行自立,退院までの期間を算出し,片側施行群の平均を求め,その結果を両側同時の3例と比較した. 【結果】 片側群の平均は,離床までが1.68±0.48日,起立開始までが3.59±1.44日,T字杖歩行自立までが13.60±5.15日,退院までが28.86±6.75日となっていた.一方,両側同時は,離床が3例とも2日,起立開始は,症例1が6日,症例2が4日 ,症例3が7日,T字杖歩行自立は,症例1が13日,症例2と3が9日 ,退院は,症例1が26日,症例2が30日 ,症例3が29日となっており,離床と起立開始までは片側群が短かったが,T字杖歩行自立は両側同時が全例とも片側群よりも短かった. 【考察】 両側同時TKAは手術による侵襲が大きく,両側に疼痛があるため,離床,起立開始までに期間を要したことが考えられた.しかしながら,手術侵襲による疼痛が軽減されると,両側とも膝OAによる疼痛が認められなくなることからT字杖歩行自立に至るのが早かったと考えられた.両側同時にTKAを施行した症例は,手術侵襲による疼痛が軽減し,荷重が可能となれば,早期にT字杖歩行が自立すると予想されるため,術後早期は離床を焦らず,合併症の予防に務めることが重要であると考えられた. 【まとめ】 今回,術後理学療法の経過について,両側同時の3例と片側群の平均を比較検討したところ,両側同時例は離床,起立練習開始までの期間は長かったが,T字杖歩行自立までは短かった.これは,手術侵襲による疼痛が影響していると考えられた.両側同時が3例と少ないため,今後,症例数を増やし,さらなる比較検討を行う必要がある. |
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Bibliography: | 198 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_198 |