腰椎変性疾患で下垂足を呈した症例の股関節外転筋力と歩行能力の関係

【目的】 前脛骨筋麻痺による下垂足は腰椎変性疾患の症状の一つであるが,その神経支配が重複する筋として中殿筋があげられる.本研究の目的は,下垂足を呈する症例は股関節外転筋(以下,股外転筋)の筋力低下が同時に生じているのか,また下垂足症例の歩行に股外転筋力が影響しているのかを検討することである. 【方法】 対象は腰椎変性疾患症例115例(67.9±12.0歳.男性56例,女性59例)とし,股外転筋力,足関節背屈筋力(以下,足背屈筋力),足背屈筋MMT,TUG,10m最大歩行速度(以下,歩行速度)を測定した.筋力はアニマ社製μTas F-1にて最大等尺性筋力を測定,ピークトルク体重比(Nm/kg)に...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 p. 192
Main Authors 袴田, 暢, 中山, 裕子, 細野, 敦子, 渡辺, 慶, 山崎, 昭義
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
Subjects
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【目的】 前脛骨筋麻痺による下垂足は腰椎変性疾患の症状の一つであるが,その神経支配が重複する筋として中殿筋があげられる.本研究の目的は,下垂足を呈する症例は股関節外転筋(以下,股外転筋)の筋力低下が同時に生じているのか,また下垂足症例の歩行に股外転筋力が影響しているのかを検討することである. 【方法】 対象は腰椎変性疾患症例115例(67.9±12.0歳.男性56例,女性59例)とし,股外転筋力,足関節背屈筋力(以下,足背屈筋力),足背屈筋MMT,TUG,10m最大歩行速度(以下,歩行速度)を測定した.筋力はアニマ社製μTas F-1にて最大等尺性筋力を測定,ピークトルク体重比(Nm/kg)に補正した.対象のうち片側足背屈筋のMMTが3未満の13例を下垂足群,両側足背屈筋のMMTが5の32例を対照群とした.下垂足を呈する側もしくは足背屈筋の筋力低下側を劣位側,反対側を優位側とした.また下垂足群を劣位側股外転筋力の中央値で筋力良好群と筋力低下群に分類,対照群を含めてTUG,歩行速度を比較した.統計学的検討は対応のないt検定,対応のあるt検定,Kruskal Wallis検定を用いSteel-Dwass法にて多重比較を行った.有意水準は5%とした.本研究は文書にて説明を行い,署名にて同意を得た. 【結果】 股外転筋力は下垂足群劣位側0.65±0.40Nm/kg,優位側0.83±0.38Nm/kgであり有意に劣位側が低値であった.対照群劣位側0.85±0.39Nm/kg,優位側0.88±0.43Nm/kgで有意差を認めなかった.下垂足群と対照群の比較は劣位側,優位側とも有意差を認めなかった.歩行速度は下垂足群0.88±0.31m/s,対照群1.23±0.36m/s,TUGは下垂足群16.44±5.59秒,対照群11.89±4.83秒で,いずれも下垂足群で有意に低値であった.筋力良好群,筋力低下群,対照群の比較は,歩行速度の中央値1.04m/s,0.61m/s,1.28m/s,TUGの中央値12.40秒,20.35秒,10.36秒であり,いずれも筋力低下群と筋力良好群,筋力低下群と対照群で有意差を認めた. 【考察】 股外転筋力は下垂足群で有意に劣位側の筋力が低く,対照群では有意差を認めず,下垂足と関連して股外転筋の筋力低下が生じる可能性が示唆された.歩行能力との関係について,歩行速度・TUGとも,筋力良好群と対照群では有意差を認めず,筋力低下群が筋力良好群および対照群より有意に低下しており,下垂足症例の歩行能力に,股外転筋力低下の影響が大きい可能性があるものと思われた. 【まとめ】 腰椎変性疾患の下垂足を呈する症例は股外転筋力低下が同時に生じているか,下垂足症例の歩行に股外転筋力が影響しているか検討した.下垂足と関連して股外転筋筋力低下が生じ,股外転筋力が歩行能力に影響している可能性が示唆された.
Bibliography:192
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_192