パーキンソン病のすくみ足に対する起立板Exの効果 第一報 ―シングルケースデザインによる検討

【目的】 パーキンソン病の患者において、すくみ足は転倒の危険因子とされている。今回、方向転換時に著明なすくみ足を呈し転倒を繰り返す患者を経験し、即時的効果のある介入方法について検討する機会を得た。その過程で、足関節矯正起立板(以下、起立板)を用いた2種類の介入について比較検討し、いくつかの知見を得たのでここに報告する。 【対象】 74歳、女性、Hoehn-Yahr重症度分類にて重症度Ⅲ。UPDRS34点。パーキンソン病の罹病期間は約6年であった。外来にて週2回の頻度でリハビリテーションを行っている。本研究の趣旨については事前に説明を行い、同意を得られている。 【方法】 研究デザインはシングルケ...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 161
Main Author 池上, 直宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_161

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Abstract 【目的】 パーキンソン病の患者において、すくみ足は転倒の危険因子とされている。今回、方向転換時に著明なすくみ足を呈し転倒を繰り返す患者を経験し、即時的効果のある介入方法について検討する機会を得た。その過程で、足関節矯正起立板(以下、起立板)を用いた2種類の介入について比較検討し、いくつかの知見を得たのでここに報告する。 【対象】 74歳、女性、Hoehn-Yahr重症度分類にて重症度Ⅲ。UPDRS34点。パーキンソン病の罹病期間は約6年であった。外来にて週2回の頻度でリハビリテーションを行っている。本研究の趣旨については事前に説明を行い、同意を得られている。 【方法】 研究デザインはシングルケースデザイン(操作交代デザイン)を用いた。独立変数は大槻らの研究を参考にし、起立板20°上で立位保持1分(傾斜板から臀部を離し、手支持)を介入A、起立板20°上で立位保持1分(傾斜板によりかかり、手支持あり)を介入Bとし、毎回の運動療法後にランダムに交代して行った。両者とも、膝は伸展位にて行った。従属変数は、立位にてその場で360°回転するのに要する時間(以下、立位回転速度)とした。各期の介入A(または介入B)の前後に測定、その差を改善度とし、介入Aと介入Bの効果を比較検討した。薬の影響を考慮し、服薬時間が一定であることを確認の上、治療と測定は毎回同一の時間帯で行った。 【結果】 介入Aでは立位回転速度に一定の改善がみられた。一方、介入Bではごくわずかな改善、または遅延がみられた。 【考察とまとめ】 対象において、起立板上での立位保持は、すくみ足に対して即時的効果があることが示された。一方で、傾斜板や手支持を利用した場合、その効果は薄れることが示された。これらの結果から、下腿三頭筋の伸張に加え、足関節を利用した前方への重心移動と股関節・体幹伸筋群を利用した姿勢保持が、すくみ足の改善に関与したと考えられる。しかし、本研究では改善の要因を明確にすることはできなかった。また、立位回転速度は測定方法の信頼性や妥当性についての検討が必要であることから、今後の課題としたい。
AbstractList 【目的】パーキンソン病の患者において、すくみ足は転倒の危険因子とされている。今回、方向転換時に著明なすくみ足を呈し転倒を繰り返す患者を経験し、即時的効果のある介入方法について検討する機会を得た。その過程で、足関節矯正起立板(以下、起立板)を用いた2種類の介入について比較検討し、いくつかの知見を得たのでここに報告する。【対象】74歳、女性、Hoehn-Yahr重症度分類にて重症度Ⅲ。UPDRS34点。パーキンソン病の罹病期間は約6年であった。外来にて週2回の頻度でリハビリテーションを行っている。本研究の趣旨については事前に説明を行い、同意を得られている。【方法】研究デザインはシングルケースデザイン(操作交代デザイン)を用いた。独立変数は大槻らの研究を参考にし、起立板20°上で立位保持1分(傾斜板から臀部を離し、手支持なし)を介入A、起立板20°上で立位保持1分(傾斜板によりかかり、手支持あり)を介入Bとし、毎回の運動療法後にランダムに交代して行った。両者とも、膝は伸展位にて行った。従属変数は、立位にてその場で360°回転するのに要する時間(以下、立位回転速度)とした。各期の介入A(または介入B)の前後に測定、その差を改善度とし、介入Aと介入Bの効果を比較検討した。薬の影響を考慮し、服薬時間が一定であることを確認の上、治療と測定は毎回同一の時間帯で行った。【結果】介入Aでは立位回転速度に一定の改善がみられた。一方、介入Bではごくわずかな改善、または遅延がみられた。【考察とまとめ】対象において、起立板上での立位保持は、すくみ足に対して即時的効果があることが示された。一方で、傾斜板や手支持を利用した場合、その効果は薄れることが示された。これらの結果から、下腿三頭筋の伸張に加え、足関節を利用した前方への重心移動と股関節・体幹伸筋群を利用した姿勢保持が、すくみ足の改善に関与したと考えられる。しかし、本研究では改善の要因を明確にすることはできなかった。また、立位回転速度は測定方法の信頼性や妥当性についての検討が必要であることから、今後の課題としたい。
【目的】 パーキンソン病の患者において、すくみ足は転倒の危険因子とされている。今回、方向転換時に著明なすくみ足を呈し転倒を繰り返す患者を経験し、即時的効果のある介入方法について検討する機会を得た。その過程で、足関節矯正起立板(以下、起立板)を用いた2種類の介入について比較検討し、いくつかの知見を得たのでここに報告する。 【対象】 74歳、女性、Hoehn-Yahr重症度分類にて重症度Ⅲ。UPDRS34点。パーキンソン病の罹病期間は約6年であった。外来にて週2回の頻度でリハビリテーションを行っている。本研究の趣旨については事前に説明を行い、同意を得られている。 【方法】 研究デザインはシングルケースデザイン(操作交代デザイン)を用いた。独立変数は大槻らの研究を参考にし、起立板20°上で立位保持1分(傾斜板から臀部を離し、手支持)を介入A、起立板20°上で立位保持1分(傾斜板によりかかり、手支持あり)を介入Bとし、毎回の運動療法後にランダムに交代して行った。両者とも、膝は伸展位にて行った。従属変数は、立位にてその場で360°回転するのに要する時間(以下、立位回転速度)とした。各期の介入A(または介入B)の前後に測定、その差を改善度とし、介入Aと介入Bの効果を比較検討した。薬の影響を考慮し、服薬時間が一定であることを確認の上、治療と測定は毎回同一の時間帯で行った。 【結果】 介入Aでは立位回転速度に一定の改善がみられた。一方、介入Bではごくわずかな改善、または遅延がみられた。 【考察とまとめ】 対象において、起立板上での立位保持は、すくみ足に対して即時的効果があることが示された。一方で、傾斜板や手支持を利用した場合、その効果は薄れることが示された。これらの結果から、下腿三頭筋の伸張に加え、足関節を利用した前方への重心移動と股関節・体幹伸筋群を利用した姿勢保持が、すくみ足の改善に関与したと考えられる。しかし、本研究では改善の要因を明確にすることはできなかった。また、立位回転速度は測定方法の信頼性や妥当性についての検討が必要であることから、今後の課題としたい。
Author 池上, 直宏
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  fullname: 池上, 直宏
  organization: 医療法人社団東京石心会 新緑脳神経外科 リハビリテーション科
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EISSN 2187-123X
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Wed Sep 03 06:29:50 EDT 2025
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MeetingName 関東甲信越ブロック理学療法士学会 第31回関東甲信越ブロック理学療法士学会
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PublicationTitle 関東甲信越ブロック理学療法士学会
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PublicationYear 2012
Publisher 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
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SubjectTerms すくみ足
シングルケースデザイン
パーキンソン病
Title パーキンソン病のすくみ足に対する起立板Exの効果 第一報 ―シングルケースデザインによる検討
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