上顎劣成長を伴う左側唇顎口蓋裂の長期管理症例
唇顎口蓋裂患者は,上顎劣成長や不正咬合などの審美的不調和および機能的障害をきたすことが多く,長期間にわたり複数の診療科に及ぶ治療を必要とする.今回われわれは,左側唇顎口蓋裂症例で,動的治療後8年9か月経過した長期管理症例を経験したので報告する.初診時年齢4歳9か月の女児,左側唇顎口蓋裂による不正咬合を主訴に来院した.生後3か月時に口唇形成術を,1歳6か月時に口蓋形成術を行い,その後矯正歯科治療を行った.初診時は,上顎乳前歯の口蓋側傾斜および上顎劣成長を示し,下顎骨が前方位を示す骨格性下顎前突であった.第一期治療として,上顎前方牽引装置およびリンガルアーチにより上顎骨の前方成長促進,前歯部被蓋関...
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Published in | 昭和学士会雑誌 Vol. 84; no. 5; pp. 452 - 462 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
昭和大学学士会
2024
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Subjects | |
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ISSN | 2187-719X 2188-529X |
DOI | 10.14930/jshowaunivsoc.84.452 |
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Summary: | 唇顎口蓋裂患者は,上顎劣成長や不正咬合などの審美的不調和および機能的障害をきたすことが多く,長期間にわたり複数の診療科に及ぶ治療を必要とする.今回われわれは,左側唇顎口蓋裂症例で,動的治療後8年9か月経過した長期管理症例を経験したので報告する.初診時年齢4歳9か月の女児,左側唇顎口蓋裂による不正咬合を主訴に来院した.生後3か月時に口唇形成術を,1歳6か月時に口蓋形成術を行い,その後矯正歯科治療を行った.初診時は,上顎乳前歯の口蓋側傾斜および上顎劣成長を示し,下顎骨が前方位を示す骨格性下顎前突であった.第一期治療として,上顎前方牽引装置およびリンガルアーチにより上顎骨の前方成長促進,前歯部被蓋関係の改善を行い,セクショナルアーチにて叢生の改善を行った.9歳0か月時の犬歯萌出時期に合わせて顎裂部骨移植を行った.その後,15歳4か月からマルチブラケット法による第二期治療を開始した.18歳4か月時に動的治療を終了し,保定を開始した.動的治療終了後8年9か月時,瘢痕組織による上顎歯列弓幅径の減少がみられ,わずかな後戻りが認められたが,咬合はほぼ安定し,良好な状態が維持されている. |
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ISSN: | 2187-719X 2188-529X |
DOI: | 10.14930/jshowaunivsoc.84.452 |