腎生検後17年目に診断された腎動静脈瘻の1例

<はじめに>動静脈瘻(arteriovenous fistula;AVF)には先天性のものと後天性のものがある。後天性のAVFの原因として腎生検は最も多いが、大部分は無症状で数ヶ月以内に自然閉鎖する。しかしながら、0.1~4%程度の頻度で短絡路が持続して存在するといわれている。今回は腎生検後17年目に巨大AVFとなり発見された1例を経験したので報告する。<症例>64歳。女性。<家族歴・既往歴>特記事項<現病歴>昭和43年・46年に妊娠中毒症と診断され以後蛋白尿が継続していた。昭和52年から高血圧、慢性腎炎として近医にて経過観察されていた。平成2年、精密検査のため他院を受診した。左腎の生検を施行...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 219
Main Authors 木村, 元政, 羽入, 修吾, 福原, 康夫, 五十川, 修, 倉持, 元, 柳橋, 和仁, 長谷川, 伸, 石崎, 文雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.219.0

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Summary:<はじめに>動静脈瘻(arteriovenous fistula;AVF)には先天性のものと後天性のものがある。後天性のAVFの原因として腎生検は最も多いが、大部分は無症状で数ヶ月以内に自然閉鎖する。しかしながら、0.1~4%程度の頻度で短絡路が持続して存在するといわれている。今回は腎生検後17年目に巨大AVFとなり発見された1例を経験したので報告する。<症例>64歳。女性。<家族歴・既往歴>特記事項<現病歴>昭和43年・46年に妊娠中毒症と診断され以後蛋白尿が継続していた。昭和52年から高血圧、慢性腎炎として近医にて経過観察されていた。平成2年、精密検査のため他院を受診した。左腎の生検を施行し、良性腎硬化症と診断された。平成元年、子宮筋腫の手術のため当院婦人科に入院。その際、高血圧・持続性蛋白尿について当科にコンサルトされ当科初診。腹部超音波検査にて門脈の拡張が疑われたが、腎については特に異常所見は認めなかった。平成3年7月に持続性蛋白尿について他院へ紹介された。平成9年、当科に紹介され外来通院開始した。平成10年9月1日胸部Xp上CTR68%と前回写真と比べてかなり増大が認められた。9月4日の腹部単純CTでは心囊液・腹水少量が認められ、皮下・腸間膜・後腹膜・各脂肪組織全体にedematousな印象であり、肝・胆・膵・脾・腎に異常を認めなかった。平成17年5月23日に下痢で当科を受診した際に、左季肋部を最強点とし、収縮期・拡張期ともに聴取される血管雑音が認められた。腹部単純CTでは腹水が少量認められた。その後徐々に、血圧のコントロールが悪くなってきたため、平成19年2月13日入院した。<理学所見>身長148.5cm、体重37kg、血圧169/78mmHg、下腿に浮腫を認めた。<経過>入院後、腹部エコーで左腎動静脈瘻を指摘され造影CT、レノグラム等の精査を行った。CTにて動静脈瘻に合併した静脈瘤横径は32mmであった。循環動態の改善と腎不全悪化の抑制を目的に3月14日左腎動静脈瘻塞栓術を行った。術後血管雑音は消失し、心胸郭比の改善が認められた。また、血圧コントロールが良好となった。<考察>後天性動静脈瘻は血液透析時の血管確保のために作製されたもの、あるいは銃創、ナイフ創のような貫通性外傷の結果、あるいは動脈カテーテル法や外科手術時切開の合併症として発生する。稀な原因として動脈瘤の静脈内への破裂で起こることもある。今回の症例の場合、原因の特定は難しいが、平成2年に行われた腎生検が原因である可能性が否定できない。一般に腎生検の合併症としてのAVFは腎生検時の太い生検針の使用や採取時に生検針の内筒先端が皮髄境界を越えることがAVFの発症する要因となる。大部分は自然消失するが、肉眼的血尿が持続する場合および尿路タンポナーデによる急激な腎機能悪化見られる場合には加療が必要である。また、AVFの中には稀に大きくかつ血流の早い瘻孔が形成されることがあり、コイル塞栓術施行時にマイクロコイルが静脈側へ逸脱することも報告されている。一般に瘻孔が大きいhigh flow AVFに対しては外科的切除術あるいは結紮術が標準的である。今回の症例では比較的瘻孔が大きくhigh flowであったが、コイル塞栓術にて瘻孔を閉鎖することができた。しかし、常に静脈側への逸脱の可能性があることを記憶しておくべきである。<結語>腎生検の施行後17年目にして巨大腎動静脈瘻に対してコイル塞栓術が奏功した1例を報告した。腎生検後、腎動静脈瘻の有無につき長期にわたり経過を観ていくことが重要である。
Bibliography:2C19
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.219.0