長野松代総合病院にドクターヘリコプターで搬送された,患者および家族への医療ソーシャルワーカーの役割

【はじめに】2005年12月,長野松代総合病院(以下当院)では新病棟建設に伴い,屋上にヘリポートを設置し,ドクターヘリコプター(以下ドクヘリ)の受け入れを行っている.ドクヘリで搬送された患者・家族への援助における医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の役割について検討したので報告する. 【対象および方法】1)2005年12月から2008年3月までの2年4ヶ月間にドクヘリで搬送された32事例を対象とし,性別,年齢,患者住所地,保険種別,主傷病名,入院期間,治療成績および転出先を分析した.2)32事例のうち,MSWが関与した7事例について,患者本人・家族からの相談内容,および各相談内容に対するMSW...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 372
Main Authors 瀧澤, 勉, 小林, 健太郎, 滝澤, 秀敏, 村松, 友雄, 鈴木, 祥絵, 相澤, 徹明, 秋月, 章, 中村, 裕一, 春日, 好雄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.57.0.372.0

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Summary:【はじめに】2005年12月,長野松代総合病院(以下当院)では新病棟建設に伴い,屋上にヘリポートを設置し,ドクターヘリコプター(以下ドクヘリ)の受け入れを行っている.ドクヘリで搬送された患者・家族への援助における医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の役割について検討したので報告する. 【対象および方法】1)2005年12月から2008年3月までの2年4ヶ月間にドクヘリで搬送された32事例を対象とし,性別,年齢,患者住所地,保険種別,主傷病名,入院期間,治療成績および転出先を分析した.2)32事例のうち,MSWが関与した7事例について,患者本人・家族からの相談内容,および各相談内容に対するMSWの援助内容を分析した. 【結 果】1)32事例のうち,性別は,男性が31人で97%であった.平均年齢は40.1±23.5歳であった.患者住所地は,長野県外が56%と過半数を占めていた.保険種別は,85%が医療保険を使用していた.主傷病名別割合では,外傷の割合が多く,ウインタースポーツ外傷11人(34%),その他外傷7人(22%),スポーツ外傷6人(19%)で,合計75%であった.入院期間は平均27.0±25.7日であった.治療成績は生存が100%であった.転出先は転院12人(38%),在宅19人(59%),施設1人(3%)であった.患者住所別の転出先では,長野県外住所者の56%が転院であった. 2)MSWが相談を受けた内容で多かったのは,転院に関する相談,および医療費の支払いに関する相談であった.患者・家族が転院先を選択・決定する際の情報提供や,転院先との調整を行った.また医療費支払いについて,高額療養費申請方法の説明や,健康保険組合との連絡調整等を行った. MSWが関与した事例ごとの,医療費の窓口負担額,および入院日数を見ると,窓口負担額が100万円を超える額となっている事例が見られた.今回MSWが関与した全事例の医療費は,全額支払われていた. 【考 察】ドクヘリで搬送された32事例を見ると,夏のスポーツ合宿や冬のスポーツにおける外傷などを生じた割合が多い点が特徴であった.これは,当院の立地する長野県北部地域ではスキー・スノーボードなどの冬のスポーツが盛んであり,隣接する長野県東部地域の菅平高原ラグビー場では,夏のスポーツ合宿が盛んであることに起因すると思われた. 今回の事例におけるMSWの主な役割として,転院に関する相談援助・調整が挙げられる.今回の事例では,長野県外住所者の転院先が遠方であるため,転院先に関する情報の不足する点が問題であった.MSWのネットワークを通じた情報収集と,転院先の医療機関のMSWや患者の家族との緊密な連携による,円滑な転院を援助した. 医療費支払いに関しては,高額な医療費の支払い方法について相談を受ける際,患者・家族の経済的・社会的背景を把握した上で,各種制度利用のための情報提供を行った.制度活用により,未収金防止を図ることもMSWの役割であると思われる. 今回の事例では見られなかったが,今後の課題として,在宅へ転出する患者の自立生活のための援助,低所得者等への制度活用による未収金発生防止や,県外在住患者等の保証人確保等の対応が必要になると思われる.そのため,院内関係部署や院外の関係機関等と連携し,より迅速に役割を遂行することが課題である.
Bibliography:2J325
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.57.0.372.0