病院感染サーベイランスからみた薬剤耐性菌の動向

【はじめに】methicillin耐性Staphylococcus aureus (MRSA)による病院感染に加え,薬剤耐性菌の増加が問題となっている。当院では1999年にICT(Infection Control Team:感染対策チーム)を発足して活動している。その活動の一環として実施している薬剤耐性菌をターゲットにしたサーベイランスシステムと2002から2004年における薬剤耐性菌の動向について報告する。【対象】細菌培養検体から薬剤耐性菌が分離された全入院患者,月平均54件【方法】臨床検査技師から臨床現場へ報告する細菌培養結果と同時にICTサーベイランス用紙を発行する。それをもとに専任I...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 54; p. 290
Main Authors 松島, 由実, 川上, 恵基, 別所, 裕二, 鈴木, 美絵, 山本, 伸仁, 村田, 哲也
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2005
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.54.0.290.0

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Summary:【はじめに】methicillin耐性Staphylococcus aureus (MRSA)による病院感染に加え,薬剤耐性菌の増加が問題となっている。当院では1999年にICT(Infection Control Team:感染対策チーム)を発足して活動している。その活動の一環として実施している薬剤耐性菌をターゲットにしたサーベイランスシステムと2002から2004年における薬剤耐性菌の動向について報告する。【対象】細菌培養検体から薬剤耐性菌が分離された全入院患者,月平均54件【方法】臨床検査技師から臨床現場へ報告する細菌培養結果と同時にICTサーベイランス用紙を発行する。それをもとに専任ICN(Infection Control Nurse:感染管理認定看護師)が院内をラウンドし,各症例について感染状況(感染状態・保菌状態など)を判断したデータを臨床検査技師が集計・統計を行っている。感染・保菌率=感染・保菌患者数/のべ入院患者数×1000として集計した。それらのデータは週1回実施しているICTラウンドや感染対策委員会で分析し,継続的な監視を行なっている。【結果】MRSAの感染率に差はみられなかったが,保菌率は有意な上昇を認めた。また,その他の薬剤耐性菌による感染率に関しては減少傾向であった。【考察】以前,当院ではカルバペネム耐性緑膿菌を始めとする薬剤耐性陰性桿菌が多く検出されており,また報告された感受性データを見ていないと言った事例もあったため,ICTラウンドにおける適正使用の指導やICTニュースなどによる啓蒙を行なったことが,薬剤耐性陰性桿菌による感染率が減少したと考えられる。また各病棟薬剤師による抗菌薬に関する監視や指導の効果も大きいのではないかと思われる。MRSAは皮膚・呼吸器・消化管などに定着しやすく,健常人から分離されることも少なくはない。またMRSAは健常人にとって大きな問題とはならないが,患者がひとたび感染すると難治化することが多く,全身状態の悪化や入院の長期化を強いられることになる。MRSAの感染率に差がみられなかったことから十分ではないが感染予防対策が講じられているのではないかと考えられるが,MRSA保菌率の有意な上昇や患者の高齢化などを考えると,今後は徹底した,あるいはより強化した感染予防対策が必要不可欠である。大きな社会問題にまで発展している病院感染の予防対策を推進していくことは,質の高い医療を提供することや,病院の不利益を抑えることにつながり,ICTの活動意義は大きいと考える。今後も病棟ラウンドによるサーベイランスを継続することにより,薬剤耐性菌の動向を正確に把握するとともに,アウトブレイク(多発流行)の予防に務めていくことが必須である。 【まとめ】MRSA保菌率の上昇は,近い将来感染率の増加につながると考えられ,スタンダードプリコーション(標準予防策)および接触予防策の徹底が重要である。ICTの一員である臨床検査技師は,サーベイランスを実施することで現状を把握するとともに,薬剤耐性菌の動向に関する情報をリアルタイムに現場に発信していくことが必要である。
Bibliography:2K10
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.54.0.290.0