高齢者における大腿骨頚部骨折術後患者への栄養介入
<はじめに> 手術などの侵襲下では代謝が亢進し、必要栄養量はより増大するといわれている。大腿骨頚部骨折患者の多くを占める高齢者においては、もともと低栄養状態にある者が多く、栄養状態を受傷以前に近づけることが術後のリハビリテーション、ADL自立には重要であると考えた。そこで大腿骨頚部骨折患者を対象に栄養介入を行ったが、中には栄養介入をしても摂取量が増えず、栄養改善が困難な患者が約6割みられた。今回、Alb値の比較検討から、今後更に個々の患者にあった早期栄養介入の重要性が示されたので報告する。 <研究方法> 1.期間 平成19年11月から12月(2ヶ月間) 2.対象 当科入院で大腿骨頚部骨折の手術...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 279 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
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ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.279.0 |
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Summary: | <はじめに> 手術などの侵襲下では代謝が亢進し、必要栄養量はより増大するといわれている。大腿骨頚部骨折患者の多くを占める高齢者においては、もともと低栄養状態にある者が多く、栄養状態を受傷以前に近づけることが術後のリハビリテーション、ADL自立には重要であると考えた。そこで大腿骨頚部骨折患者を対象に栄養介入を行ったが、中には栄養介入をしても摂取量が増えず、栄養改善が困難な患者が約6割みられた。今回、Alb値の比較検討から、今後更に個々の患者にあった早期栄養介入の重要性が示されたので報告する。 <研究方法> 1.期間 平成19年11月から12月(2ヶ月間) 2.対象 当科入院で大腿骨頚部骨折の手術を受けた患者12名(平均年齢83.5歳・75歳未満3名、75歳以上9名)平均入院日数31日 3.方法 食事摂取量が5割以下の患者に嗜好調査、栄養介入を行い、入院時・手術後・退院時のAlb値・体重変化から栄養評価を行う。 <結果> 表1のごとく手術後Alb値が最低値となった測定日は一定ではなかったが、ほとんどの患者は手術後低値を示した。しかし、栄養改善をしてAlb値が退院時上昇傾向にあったのは、10名であった。入院時のAlb値が退院時に上昇した患者は1名。ほとんどの患者は入院時のAlb値までには至らなかった。手術後にAlb値が低値となったが退院時まで高値を示したのは1名であった。 以上のことをまとめると、手術後年齢に関係なく、ほとんどの患者はAlb値が低下した。また、手術後から、退院までに1名の患者を除きAlb値はほとんど同じか、改善傾向にあった。 体重については、離床時から退院まで1名を除きほとんどの患者に体重変化がみられなかった。 <考察> 手術後は、手術による侵襲が大きく食事の必要量と摂取量のバランスがとれず低栄養に拍車をかけると考えられる。入院時より食事状況の観察、個々の嗜好に添った食事への変更や栄養補助食品の使用を行い早期に栄養介入が出来たことで、低栄養状態の発生を少なくすることが出来たと考える。また中には認知症を有する患者もあり、食事に対して無関心となり、食事摂取量が低下し、栄養介入するも摂取量が増えず、Alb値も改善しない例がみられ、認知症の患者は栄養改善に影響を与える原因と考えられた。これらのことから、高齢者の多い大腿骨頚部骨折患者では低栄養状態に陥ることが多く、栄養改善には入院時より早期の栄養介入、栄養状態の評価が必要であると考えられる。 体重については、離床時から退院時、ほとんどの患者に体重減少がみられなかったことから、極端な低栄養におちいるものがなかったと考える。高齢者の大腿骨頸部骨折術後患者に対して早期の栄養介入を行うことで栄養改善の効果と受傷以前の生活を取り戻すことが期待できると考えられる。 <まとめ> (1)入院時より早期に栄養介入することで低栄養を回避することが出来る (2)栄養状態を適宜評価し個々の患者にあった介入が必要である。 |
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Bibliography: | 2F232 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.279.0 |