介護予防事業における運動指導,講義,セルフモニタリングの効果
【目的】 近年,急速な高齢化に伴い高齢者を対象とした介護予防事業(以下,事業)が全国各地で展開されている.しかし,これまでの事業の評価指標は,実施回数や事業内容,参加人数などをあげているものが多く,アウトカム評価(実施効果に関する評価)を行っているものは少ない(川越,2006).そのため,事業に関するデータを蓄積していくことは重要であると考えられる.そこで本研究では,地域在住高齢者を対象に事業を実施し,効果を検証することを目的とした. 【方法】 対象は事業に参加した14名(男性5名,女性9名,平均年齢76.8±5.1歳:66-86歳,身長152.5±10.2cm,体重58.6±11.1kg)....
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Published in | 関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 38 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
2012
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Subjects | |
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ISSN | 0916-9946 2187-123X |
DOI | 10.14901/ptkanbloc.31.0_38 |
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Summary: | 【目的】 近年,急速な高齢化に伴い高齢者を対象とした介護予防事業(以下,事業)が全国各地で展開されている.しかし,これまでの事業の評価指標は,実施回数や事業内容,参加人数などをあげているものが多く,アウトカム評価(実施効果に関する評価)を行っているものは少ない(川越,2006).そのため,事業に関するデータを蓄積していくことは重要であると考えられる.そこで本研究では,地域在住高齢者を対象に事業を実施し,効果を検証することを目的とした. 【方法】 対象は事業に参加した14名(男性5名,女性9名,平均年齢76.8±5.1歳:66-86歳,身長152.5±10.2cm,体重58.6±11.1kg).対象者に対し,事前に本研究の趣旨を文章と口頭にて説明し,署名にて同意を得た.理学療法士の指導のもと,講義と運動指導を1回60分,概ね二週間に一度の頻度で6ヶ月間,計12回実施した.講義は,家屋環境のチェックポイント,ウォーキング,腰痛予防の生活習慣,転倒について行った.運動指導は,座位や立位で行える体幹・下肢筋力強化,ストレッチ,バランス練習を行った.また,自宅でも運動を行えるよう,理学療法士が作成したパンフレットを配付した.運動の動機付けとして,自宅で運動を1種類行うたびにペットボトルにおはじきを1つ入れるよう指示した.事業参加時にペットボトルの重さを計測し,グラフ化して対象者に示した.体力測定として,事業の1回目と11回目に長座体前屈,握力,Timed Up & Go Test(以下,TUG),5m最大歩行速度,開眼片脚立ち,Functional Reach Testを実施した.統計学的解析は,各測定項目を対応のあるt検定を用いて検討し,有意水準は5%未満とした. 【結果】 有意な改善を認めたのは,TUG(p<0.01,95%信頼区間:1.24~2.18)と5m最大歩行速度(p<0.05,95%信頼区間:0.06~0.72)であった.その他の項目は有意差を認めなかった. 【考察】 5m最大歩行速度は95%信頼区間の下限値が0.06と低く,臨床的に有意な改善とは言い難い.一方,TUGは有意な改善と考えられた.この2項目で異なる点は,椅子の立ち座り動作と方向転換の有無である.今回の指導内容により,これらの動作速度が速くなり,それに伴ってTUGの速度が速くなったと考えられた. 【まとめ】 地域在住高齢者に対し,事業の効果検証を行った.本研究の事業内容は,TUGの改善に繋がることが示唆された. |
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Bibliography: | 38 |
ISSN: | 0916-9946 2187-123X |
DOI: | 10.14901/ptkanbloc.31.0_38 |