学校教育における理学療法士の関わり

【はじめに】 近年,こどもの運動・スポーツ不足に伴う生活習慣病・体力低下が指摘される一方で,運動・スポーツ過多によると思われるスポーツ外傷・障害が多発していると言われる.発育期である小学校高学年から中学生にかけてはこの時期特有の運動器疾患があり正しい知識をもって対応することで障害予防や症状の重症化を防ぐことにつながる.今回,小学校において「成長期の身体の特徴とケガの予防」というテーマで授業依頼を受け,実施したのでここに報告する.今後の学校教育における理学療法士の関わりも含め考察を加える. 【方法】 平成23年度東京都スポーツ教育推進校であるA市立B小学校より研究発表会における授業のゲストティー...

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Published in関東甲信越ブロック理学療法士学会 Vol. 31; p. 92
Main Authors 渡部, 真由美, 西嶋, 力, 原田, 長, 板倉, 尚子, 林, 弘康
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会 2012
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ISSN0916-9946
2187-123X
DOI10.14901/ptkanbloc.31.0_92

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Summary:【はじめに】 近年,こどもの運動・スポーツ不足に伴う生活習慣病・体力低下が指摘される一方で,運動・スポーツ過多によると思われるスポーツ外傷・障害が多発していると言われる.発育期である小学校高学年から中学生にかけてはこの時期特有の運動器疾患があり正しい知識をもって対応することで障害予防や症状の重症化を防ぐことにつながる.今回,小学校において「成長期の身体の特徴とケガの予防」というテーマで授業依頼を受け,実施したのでここに報告する.今後の学校教育における理学療法士の関わりも含め考察を加える. 【方法】 平成23年度東京都スポーツ教育推進校であるA市立B小学校より研究発表会における授業のゲストティーチャーの依頼を受けた.小学校5年生の2クラスを対象に2日間にわたり計4校時,「成長期の身体の特徴とケガの予防」というテーマで実技を交えた授業を実施した.内容は1.骨の成長に伴う筋腱の柔軟性低下と骨端軟骨の強度低下によって引き起こされやすい運動器疾患の予防について,その身体的特徴,また簡単な柔軟性のチェック方法と,それを改善させるストレッチの実技を通して紹介した.2.神経系の発達,神経筋の発達と転倒予防・外傷予防についてそのメカニズムと簡単なバランスチェックの方法,バランス能力を向上させる運動を実技を通して紹介した. 【結果】 こどもたちは運動前後による柔軟性の改善を中心に自分の身体変化を敏感に感じ取っていた.その後の聞き取り調査では,大半のこどもたちが紹介した運動を継続し,その効果に喜びを感じているとの事だった.また教員においてもケガの予防というと環境整備という視点を主としていたが,今回の関わりをきっかけに内的な働きかけによっても予防につながるのだということを理解できたという感想であった. 【考察】 専門的な知識をもった理学療法士が授業を通してこどもたちに関わることで,こどもたちが自分の身体に興味をもつ大きなきっかけになった.発育期における運動器疾患はその時期の運動機会を奪うだけでなく,その後のスポーツ活動継続の断念や,加齢に伴う退行性変化がより進行する可能性もあることから,正しい知識を提供する今回のような活動は意義のあるものであると考える.今後もこの活動を継続すると共に,特定の学校だけでなく,市内,都内へと活動の場を広げ,理学療法士がより多くのこどもたちと教育現場に正しい知識を提供し,発育期の運動器疾患の予防の一躍を担えると考える.
Bibliography:92
ISSN:0916-9946
2187-123X
DOI:10.14901/ptkanbloc.31.0_92