肩関節人工骨頭置換術後リハビリテーションの検討

【はじめに】外傷による上腕骨近位端骨折に対し、骨折の転位が著明で整復や強固な骨接合を行うことが困難な場合や、あるいは骨頭への血行障害が考えられる場合などでは人工骨頭置換術が適応とされる。また、術後リハビリテーション(以下RH)においては、関節内外の血腫や筋腱および関節包等軟部組織の損傷により関節拘縮を生じやすい要素が存在するにもかかわらず、慎重な進行が求められ後に機能障害を残すことが少なくない。今回我々は、上腕骨近位端骨折後、人工骨頭置換術を施行された症例に対し術後RHを経験する機会を得たためその訓練経過と成績を報告する。 【対象】平成17年12月~平成19年4月の期間に当院にて上腕骨近位端骨...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 291
Main Authors 江崎, 豊英, 吉井, 俊英, 益田, 和明, 田畑, 良祐, 仲井, 宏史, 森井, 幸一, 野々村, 容典, 河村, 章史
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.56.0.291.0

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Summary:【はじめに】外傷による上腕骨近位端骨折に対し、骨折の転位が著明で整復や強固な骨接合を行うことが困難な場合や、あるいは骨頭への血行障害が考えられる場合などでは人工骨頭置換術が適応とされる。また、術後リハビリテーション(以下RH)においては、関節内外の血腫や筋腱および関節包等軟部組織の損傷により関節拘縮を生じやすい要素が存在するにもかかわらず、慎重な進行が求められ後に機能障害を残すことが少なくない。今回我々は、上腕骨近位端骨折後、人工骨頭置換術を施行された症例に対し術後RHを経験する機会を得たためその訓練経過と成績を報告する。 【対象】平成17年12月~平成19年4月の期間に当院にて上腕骨近位端骨折後人工骨頭置換術(エクリス人工骨頭;TOKIBO)が施行され、そして術後RHが行われ経過観察が可能であった5例(男性2例、女性3例)5肩(右3例、左2例)を対象とした(内1名は現在継続中)。年齢は56~84(平均71.2)歳であった。 【方法】術後のRHの進行については、人工骨頭置換術後RHプロトコールを当科で作成し、その進行は各主治医の判断とした。術後RHのプロトコール内容としては、大・小結節が仮骨形成される3週前後までは0~90°の他動的な前挙運動やstooping exerciseを行いgleno-humeral jointの可動域を確保し(他動的伸展外旋運動は禁止)、術後3~4週後は徐々に他動的運動範囲を拡大し自動介助運動を行うこととした。この時から開始される各運動は無理な可動範囲の強制は避け可能な範囲でscapular plane上から徐々に可動範囲を拡大していくよう心がけた。5週前後から自動挙上や抵抗運動,cuff exercise等複合的な肩関節の運動を開始した。 【結果】上腕骨近位端骨折の内訳は、Neer分類の3-part(脱臼)骨折2例、4-part骨折2例で、その他、粉砕(脱臼)骨折+骨幹部骨折1例であった。発症から手術までの期間は6~13(平均9.4)日、術後RH開始までの期間は6~12(平均8.2)日、術後自動運動開始までの期間は15~38(平均25.2)日であった。術後からRH終了日までの期間は117~149(平均138)日で、3例が診療報酬改定後の算定日数制限による終了であった。RH終了時自動挙上(前挙)は30~115°(平均88.7°)で、JOA scoreは34~79(平均62.6)点であった。また、X線評価では肩峰-骨頭間距離(AHI)の狭小化が1例、上腕骨下垂位が1例にみられた。 【考察】上腕骨近位端骨折に対する人工骨頭置換術後成績に影響を与える因子として、受傷から手術までの期間、脱臼の有無、大・小結節の固定性(転位・吸収)、年齢、筋力不足、内科的合併症があり、術後RHを行う上で大・小結節の固定性や筋力不足は特に注意を要すると考えられる。今回経験した症例では、術後腋窩神経麻痺を合併した症例を除いた他の症例において、明らかな大結節の転位・吸収等はないものの自動挙上可動域は105~115°と充分といえる結果には至らなかった。算定制限によりRHを終了される症例も多く、今後は我々セラピストも大・小結節などの骨片の固定性を包括的に評価し固定性が充分な症例においてはより早期の積極的なRHの展開が必要であると考えられた。
Bibliography:2F108
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.291.0