高度耐性菌、多剤耐性菌の院内感染対策の経験

【緒言】当院における耐性菌サーベイランスは、院内感染対策に問題となりうる薬剤耐性菌の感染発生動向を調査し、その対策を打ち立てることを目的としている。薬剤耐性菌の代表であるMRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus :メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)以外にも、近年問題となっているESBL (Extended-spectrum β-lactamase)産生菌やMDRP (Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa:多剤耐性緑膿菌)のサーベイランスを実践した。それらの院内感染を防止させるための対策と実際の...

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Published in日本農村医学会学術総会抄録集 p. 379
Main Authors 大榮, 薫, 尾崎, 隆男, 舟橋, 恵二, 森下剛久, 剛久, 加藤, 幸男
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2007
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Summary:【緒言】当院における耐性菌サーベイランスは、院内感染対策に問題となりうる薬剤耐性菌の感染発生動向を調査し、その対策を打ち立てることを目的としている。薬剤耐性菌の代表であるMRSA (Methicillin-resistant Staphylococcus aureus :メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)以外にも、近年問題となっているESBL (Extended-spectrum β-lactamase)産生菌やMDRP (Multidrug-resistant Pseudomonas aeruginosa:多剤耐性緑膿菌)のサーベイランスを実践した。それらの院内感染を防止させるための対策と実際の対応事例を紹介する。【方法】_丸1_院内感染対策上問題となりうる耐性菌検出後のフローチャートの作成。_丸2_耐性菌サーベイランスの実践。_丸3_感染症隔離予防策マニュアルの実践。_丸4_入院における平成17年10月から平成19年3月まで18ヵ月間の対応事例。【結果】_丸1_院内感染対策上問題となりうる耐性菌の定義を確認、また、発生からその対策までをフローチャートとしてまとめた。ポイントとしては、Infection Control Team:ICTに報告されることによる早期対策の実現にある。ほとんどの症例において、ESBL等の耐性菌検出報告から数時間で感染症状の把握、並びにより強力な抗菌薬療法の開始、または経過観察など治療方針が決定されていた。_丸2_耐性菌の検出において、通常はカルテに添付される細菌検査報告書を確認する必要がある。その場合、主治医が院内感染対策上問題となりうる耐性菌と判断するまでに時間を要する場合も少なくない。当院ではESBL、MDRPなどが検出された場合、主治医・ICT事務局・各病棟師長に細菌検査室より第一報が電話連絡される。ICT事務局の初動により、カルテ記載内容を確認し、その情報を基にICT医師によるフォローアップを始める。主治医との協議、及び連携によって感染症状の有無の判断、また抗菌薬療法が適切であるか等方針決定されるが、治療に於いては、ICT作成の昭和病院抗菌薬療法ガイドラインは十分に活用されていた。_丸3_前記のように主治医や病棟師長ばかりでなく、ICTより、感染症隔離予防策マニュアルの実践を関係スタッフに啓発した。_丸4_ESBLの報告は60件、うち感染症状無しと判断された状況は14件、検体提出日より適切な抗菌薬療法の実践は20件、より強力な抗菌薬療法を必要とした状況は24件、残る2件は原疾患の悪化による報告日前の死亡であった。またMDRPの報告は7件あり、その全てはmetallo-β-lactamaseを産生しないと判断された。感染症状が無しと判断された状況は2件、全ての抗生剤の中止による薬剤感受性の改善は3件、入院当日に検出され当日死亡が1件、原疾患および肺炎の悪化により約1月後に死亡したケースが1件であった。metallo-β-lactamaseを産生するP.fluorescensの報告1件では、全ての抗生剤を中止し、隔離対策も実施した。【まとめ】ICTによる耐性菌サーベイランスで高度耐性菌が検出された際、その対策は全て当日の内に確立された。その治療に於いて、ICT作成の昭和病院抗菌薬療法ガイドラインは十分に活用されていた。また、検出される菌の感受性パターンの相違から、高度耐性菌の院内伝播は発生していないと判断された。
Bibliography:workshop-1
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.56.0.379.0