胃・腸切除術後のキシリトールガム咀嚼による腸蠕動促進の検証
胃・腸切除術後のキシリトールガム咀嚼による腸蠕動促進の検証八木梓1)(やぎあずさ)竹内伸一1)・小林万里子1)・田中真由美1)・若松景子1)内田純子1)・矢口豊久2)愛知県厚生連海南病院外科病棟1)・同外科2)咀嚼・ガム・腸蠕動〈緒言〉近年、キシリトールガムを咀嚼し腸蠕動を促進させるという研究が発表されている。そこで今回、当病棟では先行研究より症例数を増やし、キシリトールガム咀嚼の有効性を検証したのでここに報告する。〈方法〉1) 調査期間:平成18年7月より平成19年11月8日まで。2)対象: 開腹により胃・腸切除術を受けた患者130例。3)方法_1_無作為抽出法にて咀嚼群と非咀嚼群のグループ...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 57; p. 161 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2008
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.57.0.161.0 |
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Summary: | 胃・腸切除術後のキシリトールガム咀嚼による腸蠕動促進の検証八木梓1)(やぎあずさ)竹内伸一1)・小林万里子1)・田中真由美1)・若松景子1)内田純子1)・矢口豊久2)愛知県厚生連海南病院外科病棟1)・同外科2)咀嚼・ガム・腸蠕動〈緒言〉近年、キシリトールガムを咀嚼し腸蠕動を促進させるという研究が発表されている。そこで今回、当病棟では先行研究より症例数を増やし、キシリトールガム咀嚼の有効性を検証したのでここに報告する。〈方法〉1) 調査期間:平成18年7月より平成19年11月8日まで。2)対象: 開腹により胃・腸切除術を受けた患者130例。3)方法_1_無作為抽出法にて咀嚼群と非咀嚼群のグループに分ける。_2_咀嚼群は、術後1日目より5日目まで1日3回15分ずつキシリトールガムを咀嚼する。_3_腸蠕動音を1日3回聴取する。_4_初回排ガス・排便の時間を比較する(t検定)。_5_術後6日目に咀嚼群に対し咀嚼時間・噛むことの是非・ガムの味についてアンケート調査を行った。4)対象の背景調査: 性別・年齢・手術歴・術式・麻酔時間・手術終了時間・硬膜外麻酔の有無と薬品名・術後経管栄養の有無・術後離床状況・初回排ガス・排便までの時間・腸蠕動促進剤の使用の有無と薬品名・食事開始日・術後より退院までの日数とした。5)評価分析方法: u検定にて咀嚼群・非咀嚼群の術後腸蠕動促進に関し、有意差が認められるか検討した。〈結果〉咀嚼群60名、非咀嚼群70名のデーターを収集した。初回排ガスの平均時間は、咀嚼群約58.3時間、非咀嚼群約59.4時間であり、両群の差は約1.1時間で咀嚼群が早かったが有意差はなかった(p=0.8086)。次に初回排便の平均時間は、咀嚼群約100.3時間、非咀嚼群約113.8時間であり、両群の差は約13.5時間で咀嚼群が早かったが有意差はなかった(p=0.1382)。1分間の腸蠕動回数の平均は、ほぼ咀嚼群が非咀嚼群より上回っていた。しかし統計学的には、術後1日目の朝はp=0.054、昼はp=0.0154で有意差を認めたが、夕以降は有意差がなかった。麻酔等の背景因子において両群間に差はなかった。 アンケート結果では、咀嚼時間は『ちょうどよい』が60%、ガムを噛むことについては『何とも思わなかった』が24%、味については『おいしい』が51%あった。〈考察〉ガム咀嚼によって腸の運動が促進され、術後の回復が早まることが文献的に報告されており、今回、当病棟では開腹による胃・腸切除術を受ける患者を対象に腸蠕動促進の検証を行った。その結果、キシリトールガムの咀嚼は、離床状況に影響されることなく(結果は今回示していません)、術後早期の腸蠕動が回復することが明らかとなった。 石山らは「ガム咀嚼開始と同時に交感神経が亢進し、終了後は徐々に減弱しながら副交感神経が亢進する」さらに「交感神経亢進により、消化器系の血流量増加や唾液の分泌が促され、そのことが消化機能の開始のシグナルとなっている」と述べている。このことより、ガム咀嚼が自律神経の働きを促し結果的に腸蠕動の促進へとつながったと考えられる。また、咀嚼群のアンケート結果で、『爽快感が得られた』『気晴らしになった』などの回答から、ガム咀嚼が絶食時の空腹感を紛らわす等、リラックス効果をもたらし副交感神経優位となり腸蠕動を促進させる要因にもなったのではないかと考える。 |
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Bibliography: | 1J113 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.57.0.161.0 |