P波高と左室拡張能を経時的に追跡し得た若年者高血圧性心不全の1症例
【はじめに】収縮障害のみならず拡張障害によって心不全が生じることが知られている.拡張障害に伴う心不全の改善経過を心電図と僧帽弁血流速度,組織ドプラ法を重合した指標等により経時的に追跡しえた症例を経験したので報告する. 【症例】30歳 男性,主訴:眼のちらつき,家族歴:父・祖母: 高血圧経過:検診受診歴:10年間無し.2007/1月から上記症状を自覚,近医眼科受診,眼底の出血・白斑・金箔様反射・乳頭浮腫を指摘,BP 234/162 mmHg と悪性高血圧を認め,2007/1/30当院眼科より当科紹介,2007/2/1入院となった. 身体所見:高度肥満,血圧:右240/150,左232/166m...
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Published in | Nihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 56; p. 34 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 日本農村医学会
2007
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE |
Subjects | |
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ISSN | 1880-1749 1880-1730 |
DOI | 10.14879/nnigss.56.0.34.0 |
Cover
Summary: | 【はじめに】収縮障害のみならず拡張障害によって心不全が生じることが知られている.拡張障害に伴う心不全の改善経過を心電図と僧帽弁血流速度,組織ドプラ法を重合した指標等により経時的に追跡しえた症例を経験したので報告する. 【症例】30歳 男性,主訴:眼のちらつき,家族歴:父・祖母: 高血圧経過:検診受診歴:10年間無し.2007/1月から上記症状を自覚,近医眼科受診,眼底の出血・白斑・金箔様反射・乳頭浮腫を指摘,BP 234/162 mmHg と悪性高血圧を認め,2007/1/30当院眼科より当科紹介,2007/2/1入院となった. 身体所見:高度肥満,血圧:右240/150,左232/166mmHg.心雑音,腹部血管雑音.検査所見:尿蛋白>300mg/dl,尿潜血(+++),BUN:31 mg/dl,Cr:2.59 mg/dlの腎機能障害を認め、血漿レニン活性:26.8 ng/ml/hr (0.1~2.0),血漿アルドステロン:40.8 mg/dl (3.6~24.0) と高値であった.胸部Xp:心拡大(心胸比54%),軽度肺鬱血を認めた.ECG:左房負荷(V1誘導で深い陰性P波,II, III, aVFでwideかつtall P波)とI, aVL, V6で陰性T波と左室肥大を認めた.UCG:左室壁厚:20mmと中等度左室肥大,左室拡張/収縮末期径:55/40mm,駆出率:50.7%,左房径:52mm,極めて軽度の僧帽弁閉鎖不全を認めた.僧帽弁血流波形で拡張早期波(E)速度:0.69m/s,心房収縮期波(A)速度:0.49m/s,E/A比:1.41と高値で偽正常化を示した.Tei index:1.01,組織ドプラ法による僧帽弁輪部運動速度の拡張早期波(e’)より求めたE/e’は20.1と高値で拡張能障害を認めた.経過:入院後開始した降圧剤により血圧は170/110mmHgと低下した.2/14(2週後)のUCGではE波:0.67m/s,A波:0.50m/s,E/A比:1.26,Tei index:0.79,E/e’:12.3と改善したが,収縮率,左房径は入院時と変化を認めなかった.2/19(3週後)のECGでV1の陰性P波高とII, III, aVFのP波高は減高した.2/26(4週後),検査所見では尿蛋白:30mg/dl,Cr: 2.05と改善,胸部Xpでは心胸比50%,肺鬱血も改善した.またCTで腎動脈狭窄と副腎腫瘍を認めなかった. 【考察】 本例の病態としては,高血圧心の非代償性心肥大に伴う心不全が考えられた.また降圧剤(後負荷軽減)と心不全改善に伴う左室拡張末期圧低下により拡張能は改善した可能性が考えられた. 【結語】 左室肥大と腎機能障害,眼底変化を伴う若年者悪性高血圧例において、降圧により左房負荷(心電図P波)と拡張能の指標を経時的に追跡し、短期間で拡張能が改善した症例を報告した. |
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Bibliography: | 1C10 |
ISSN: | 1880-1749 1880-1730 |
DOI: | 10.14879/nnigss.56.0.34.0 |