ハロゲン化多環芳香族炭化水素類(XPAHs)の廃棄物焼却施設からの年間排出量と大気中濃度への寄与度の推定

焼却処理は優れた廃棄物処理方法の一つではあるが,焼却に伴い非意図的に生成するダイオキン類や多環芳香族炭化水素類(PAHs),ハロゲン化PAHs(XPAHs)などの有害化学物質によるリスクが懸念されている。本研究では,埼玉県の40ヶ所の廃棄物焼却施設を対象に,排ガス中のXPAHs濃度を測定し,焼却施設からのXPAHs年間排出量を推算した。また,焼却施設由来のXPAHsの大気中濃度への寄与度を推定するため,産総研-曝露・リスク評価大気拡散モデル(AIST-ADMER)を用いて,焼却施設を唯一の発生源とした場合の大気中XPAHs濃度を推算し,実際の測定値との比較を行った。40施設のXPAHs年間排出...

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Published in環境科学会誌 Vol. 30; no. 6; pp. 336 - 345
Main Authors 王, 斉, 徳村, 雅弘, 三宅, 祐一, 雨谷, 敬史, 堀井, 勇一, 蓑毛, 康太郎, 野尻, 喜好, 大塚, 宜寿
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 社団法人 環境科学会 2017
SOCIETY OF ENVIRONMENTAL SCIENCE, JAPAN
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Summary:焼却処理は優れた廃棄物処理方法の一つではあるが,焼却に伴い非意図的に生成するダイオキン類や多環芳香族炭化水素類(PAHs),ハロゲン化PAHs(XPAHs)などの有害化学物質によるリスクが懸念されている。本研究では,埼玉県の40ヶ所の廃棄物焼却施設を対象に,排ガス中のXPAHs濃度を測定し,焼却施設からのXPAHs年間排出量を推算した。また,焼却施設由来のXPAHsの大気中濃度への寄与度を推定するため,産総研-曝露・リスク評価大気拡散モデル(AIST-ADMER)を用いて,焼却施設を唯一の発生源とした場合の大気中XPAHs濃度を推算し,実際の測定値との比較を行った。40施設のXPAHs年間排出量は0.0074–240 g/yearであり,総量は810 g/yearとなった。特に排出量の多かった2ヶ所の施設の排出量の合計は390 g/yearであり,排出総量である810 g/yearの48%を占める量であった。このことから,XPAHsの排出総量は,少数の特定の廃棄物焼却施設からの排出量の影響が大きいことが明らかとなった。XPAHsの種類ごとの年間排出総量では,6-chlorobenzo[a]pyrene (170 g/year),1-chloropyrene (130 g/year),1-bromopyrene (81 g/year),9-chlorophenanthrene (63 g/year),3-chlorofluoranthene (55 g/year),7-chlorobenz[a]anthracene (44 g/year)の排出量が多かった。塩素化PAHsと臭素化PAHsの年間排出総量の合計は,それぞれ690と120 g/yearであり,塩素化PAHsがより支配的なXPAHsであった。埼玉県内の2009年における大気中XPAHs年間平均濃度は0.020 (1,5,9-trichloroanthracene)–11 pg/m3 (9-chlorophenanthrene)であり,毒性等価換算濃度は0.000047 (6,12-dichlorochrysene)–0.012 pg-TEQ/m3(6-chlorochrysene)であった。AIST-ADMERによる大気中XPAHs濃度の推算値と実測値を比較したところ,推算値は実測値の2.1 (9-chlorophenanthrene)–39%(3,8-dichlorofluoranthene)であった。
ISSN:0915-0048
1884-5029
DOI:10.11353/sesj.30.336