赤外線を用いた転落防止センサの試作

<背景>当院過去2年間で毎月約24件ほどの転倒転落事故が報告されている。特にベッドからの転落事故は致命傷になることも少なくない。これらの背景も踏まえ、現在クリップ式のスイッチや画像処理センサなどの転落防止手段が数多く開発され市販されているが、安全性の問題、患者拘束やプライバシー問題もあり普及までには至っていない。生活の監視を極力さけることができ、安全性の高い特徴を有した転落防止センサを試作した。 <方法> 1. センサを採用する上で次の二点を要点とした。まず、患者に非接触であること。このことは、拘束感軽減はさることながら電気的接触を避けることで安全性が高いことを意味する...

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Published inNihon Nouson Igakukai Gakujyutu Soukai Syourokusyu Vol. 55; p. 38
Main Authors 関, 貴弘, 高久, 雅孝, 寺田, 紀子, 高野, 真史, 久松, 学, 上野, 信一, 倉持, 龍彦, 中澤, 寿人, 堀井, 京子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本農村医学会 2006
THE JAPANESE ASSOCIATION OF RURAL MEDICINE
Subjects
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ISSN1880-1749
1880-1730
DOI10.14879/nnigss.55.0.38.0

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Summary:<背景>当院過去2年間で毎月約24件ほどの転倒転落事故が報告されている。特にベッドからの転落事故は致命傷になることも少なくない。これらの背景も踏まえ、現在クリップ式のスイッチや画像処理センサなどの転落防止手段が数多く開発され市販されているが、安全性の問題、患者拘束やプライバシー問題もあり普及までには至っていない。生活の監視を極力さけることができ、安全性の高い特徴を有した転落防止センサを試作した。 <方法> 1. センサを採用する上で次の二点を要点とした。まず、患者に非接触であること。このことは、拘束感軽減はさることながら電気的接触を避けることで安全性が高いことを意味する。次に安価であること。単純な動作でシステムが簡単であることは、信頼性向上だけでなくランニングコストなど長期的に見ても経済性が良いことを意味する。以上の点から、赤外線(IR)センサを採用した。 2. 転落防止処理ができるかの確認をする。本来ベッド両側の処理で一つの装置であるが、試作であるため片側のみとした。なお、患者が「起き上がり」、「ベッド端への移行」する二つの動作が重なった場合を「転落危険状態」と仮定した。 <使用器具>イーケイジャパン社製、赤外線式遮光センサユニット「PU-2205R」を2個使用した。 <原理>IR受信中はセンサのリレーが開放状態、障害物が受信妨害した場合リレーは通電状態となる「PU-2205R」2個を、直列接続(論理積動作)にすることで、2つのセンサを同時に遮ったときナースコール信号が通電状態になる。 <設置方法>ベッド頭側中央部と端に受光部を配置し、ベッド足側端に発光部に配置する。ベッド頭側中央部の受光部は「起き上がり」を検知し、ベッド端の受光部が「ベッド端への移行」を検知する。これら二つの動作が重なった時、原理に従いナースコールが鳴動する。 <まとめ>赤外線遮光センサは安価で安全なセンサであり、通過する人体の感知センサとしては有用であった。転落危険状態にナースコールも鳴動し、大きな誤作動も無く動作確認ができた。  今後の課題として次の5点を挙げた。 1. 転落パターンの分析。  今後、院内調査を行い様々な転落パターンのデータを分析する。センサ位置の変更も含め検討していきたい。 2. 遮断時間の設定。  任意の遮断時間によって出力を選択できれば、更なる誤作動の防止に繋がる。 3. 出力の応用。  ナースコール端子の応用が可能であれば頭上センサの出力で「起き上がり」も報知できる。 4. 電源スイッチの検討。  例えば、光導電セルを電源に使えば夜間のみ作動し、回診時はライトがつくので休止される。赤外線人体感知センサを使えば近くに人が接近した時のみ休止できる。 5. センサの設置。  小型であるため将来的にベッド柵内蔵も可能になる。 <結論>転落防止センサとしてIRセンサの有用性はあると考えられたが、転落パターンの検討や出力処理などは今後の課題とされた。
Bibliography:1C01
ISSN:1880-1749
1880-1730
DOI:10.14879/nnigss.55.0.38.0