前治療歴のない肉腫様変化を伴った肝細胞癌の1例

症例は78歳の男性で,上腹部違和感を主訴に近医を受診した.腹部USにて肝腫瘍を指摘され,当院を紹介受診した.腹部CTでは肝S4からS5にかけて最大径6.7 cmの腫瘍を認めた.腫瘍のS5寄りの部分には被膜様構造がみられ,早期に濃染し,遅延相では低吸収域となった.S4寄りの病変部は周囲との境界が不明瞭で,辺縁から徐々に造影された.MRCPではS5の胆管枝への浸潤も疑われた.腫瘍マーカーはPIVKA-IIのみが854 mAU/mlと上昇していた.以上より,混合型肝癌を第一に考え,肝拡大右葉切除術,肝外胆管切除兼胆道再建術,肝十二指腸間膜内リンパ節郭清を施行した.病理組織学的には,肝細胞癌の一部に肉...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 46; no. 11; pp. 830 - 839
Main Authors 北村, 宏, 神藤, 修, 深澤, 貴子, 谷岡, 書彦, 鈴木, 昌八, 鈴木, 雄飛, 齋田, 康彦, 松本, 圭五, 宇野, 彰晋, 落合, 秀人
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2013
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2013.0034

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Summary:症例は78歳の男性で,上腹部違和感を主訴に近医を受診した.腹部USにて肝腫瘍を指摘され,当院を紹介受診した.腹部CTでは肝S4からS5にかけて最大径6.7 cmの腫瘍を認めた.腫瘍のS5寄りの部分には被膜様構造がみられ,早期に濃染し,遅延相では低吸収域となった.S4寄りの病変部は周囲との境界が不明瞭で,辺縁から徐々に造影された.MRCPではS5の胆管枝への浸潤も疑われた.腫瘍マーカーはPIVKA-IIのみが854 mAU/mlと上昇していた.以上より,混合型肝癌を第一に考え,肝拡大右葉切除術,肝外胆管切除兼胆道再建術,肝十二指腸間膜内リンパ節郭清を施行した.病理組織学的には,肝細胞癌の一部に肉腫様変化をみたが,腺癌成分は認めなかった.術後37か月が経過し,再発なく社会復帰している.比較的まれな肉腫様変化を伴った肝細胞癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2013.0034