悪性腫瘍との鑑別が困難であった自己免疫性膵炎の1例

症例は68歳の男性で,心窩部痛を主訴に当院内科を受診した.腹部CTで膵尾部の限局性腫大,囊胞性腫瘤,主膵管の軽度拡張と脾臓の造影不均一を認めた.また,膵体部にhyper vascularな5 mm大の腫瘤も認めた.入院,絶飲食で症状が軽快した後に精査を行った.血液検査ではIgG4が193 mg/dlと高値を示した.ERCPでは,尾側膵管の途絶像を認め,膵液細胞診では疑陽性であった.悪性疾患が否定できず,膵体尾部・脾合併切除術を施行した.病理組織学的検査所見では,膵実質の線維化,形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎とIgG4陽性細胞を多数認め,限局性自己免疫性膵炎と診断した.囊胞は仮性囊胞であり,膵体部の...

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Published in日本消化器外科学会雑誌 Vol. 46; no. 6; pp. 448 - 455
Main Authors 小林, 聡, 髙木, 健司, 塩見, 正哉, 世古口, 英, 渡邉, 博行, 成田, 道彦, 大西, 桜, 近藤, 眞治, 金森, 淳
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本消化器外科学会 2013
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ISSN0386-9768
1348-9372
DOI10.5833/jjgs.2012.0238

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Summary:症例は68歳の男性で,心窩部痛を主訴に当院内科を受診した.腹部CTで膵尾部の限局性腫大,囊胞性腫瘤,主膵管の軽度拡張と脾臓の造影不均一を認めた.また,膵体部にhyper vascularな5 mm大の腫瘤も認めた.入院,絶飲食で症状が軽快した後に精査を行った.血液検査ではIgG4が193 mg/dlと高値を示した.ERCPでは,尾側膵管の途絶像を認め,膵液細胞診では疑陽性であった.悪性疾患が否定できず,膵体尾部・脾合併切除術を施行した.病理組織学的検査所見では,膵実質の線維化,形質細胞浸潤,閉塞性静脈炎とIgG4陽性細胞を多数認め,限局性自己免疫性膵炎と診断した.囊胞は仮性囊胞であり,膵体部の腫瘤はislet cell tumorであった.脾臓は梗塞や膿瘍などの所見を認めなかった.今回,我々は腫瘍と鑑別が困難であった膵尾部限局性の自己免疫性膵炎の1例を経験したので報告する.
ISSN:0386-9768
1348-9372
DOI:10.5833/jjgs.2012.0238