人口減少社会における持続可能な水供給システムとまちづくりの動向
目的:高齢化及び人口減少,老朽化等により,小規模な上水道や簡易水道では水道事業の維持が大きな課題の一つである.上水道や簡易水道等の水道との接続や事業統合が難しい状況にある,給水人口が100人以下の飲料水供給施設や小規模な集落水道,飲用井戸等(以下,小規模水供給システム)にあっては,この影響が特に大きく,飲料水を含む生活用水を供給する「小規模水供給システム」に関する施設・財政・維持管理・衛生確保といった様々な面で多くの問題を抱え,その維持が困難となりつつある.このような水供給維持困難地域を含む地域においても衛生的な水を持続的に供給できる体制づくりに寄与することを目的として,日本の各地で行われてい...
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Published in | 保健医療科学 Vol. 71; no. 3; pp. 194 - 207 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
国立保健医療科学院
31.08.2022
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Subjects | |
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ISSN | 1347-6459 2432-0722 |
DOI | 10.20683/jniph.71.3_194 |
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Summary: | 目的:高齢化及び人口減少,老朽化等により,小規模な上水道や簡易水道では水道事業の維持が大きな課題の一つである.上水道や簡易水道等の水道との接続や事業統合が難しい状況にある,給水人口が100人以下の飲料水供給施設や小規模な集落水道,飲用井戸等(以下,小規模水供給システム)にあっては,この影響が特に大きく,飲料水を含む生活用水を供給する「小規模水供給システム」に関する施設・財政・維持管理・衛生確保といった様々な面で多くの問題を抱え,その維持が困難となりつつある.このような水供給維持困難地域を含む地域においても衛生的な水を持続的に供給できる体制づくりに寄与することを目的として,日本の各地で行われている持続可能な水供給システムとまちづくりの様々な試みを概説する.方法:研究班において多くの事例を収集すると共に,水道法の適用を受けない小規模水供給システムの衛生確保対策を行う全国の地方自治体(都道府県,市,特別区)を対象に小規模水供給システムの実態把握状況や指導体制等についてのアンケート調査を実施した.調査結果を基に,全国の小規模水供給システムに係る衛生確保対策の実態を把握し,これからの水供給の安全性確保や持続的な維持管理のための課題を整理し,今後の方策を検討する研究を行った.結果:小規模な水供給における課題が多く抽出された一方で,都道府県や近隣自治体と連携,住民らの協力により一定の持続性を確保する試みが奏功している事例もあった.他機関からの協力(相談,助言等も含む)を得るとすれば,「都道府県や近隣自治体と連携,事例紹介や相談体制を構築したい」とする意見が198件と最も多く,次いで「オンラインで講習会や勉強会,相談会があれば受けてみたい」が88件あった.他にも現地での活動を希望する声も多くあり,現地調査や講演・相談会の必要性が示された.小規模水供給を軸とした互助ネットワークの形成による社会的効用創出モデルや他の公共事業との協働の枠組みなどがあることも分かった.結論:小規模水供給に係る集約的な相談体制や厚生労働省や地方自治体,研究機関との間で共通する情報の共有化や情報提供体制の確立が重要であると考えられた. |
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ISSN: | 1347-6459 2432-0722 |
DOI: | 10.20683/jniph.71.3_194 |