人血清血管透過因子の研究

人血清中に存在する血管透過性物質の動脈硬化および高血圧性血管病変における役割は動脈病変の成り立ちを考える上で重要で興味ある問題といえる. 著者らはモルモット皮膚色素透過法を用いて人血清中に存在する血管透過因子についての検索を行ったところ, 酸溶性糖蛋白質分画に血管透過作用を示す物質を見出したので, その精製を行い2, 3の性質につき検討した. この物質は粗酸溶性糖蛋白質分画からCMセルロース・カラムクロマトグラフィーを行うことにより部分的に精製された. その分子量は推定6万前後と思われる. Disc 電気泳動および免疫電気泳動にて, この活性分画は Transferin, albumin 成分...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in動脈硬化 Vol. 3; no. 4; pp. 465 - 471
Main Authors 大山, 俊郎, 折茂, 肇, 村上, 元孝
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本動脈硬化学会 01.01.1976
Online AccessGet full text
ISSN0386-2682
2185-8284
DOI10.5551/jat1973.3.4_465

Cover

More Information
Summary:人血清中に存在する血管透過性物質の動脈硬化および高血圧性血管病変における役割は動脈病変の成り立ちを考える上で重要で興味ある問題といえる. 著者らはモルモット皮膚色素透過法を用いて人血清中に存在する血管透過因子についての検索を行ったところ, 酸溶性糖蛋白質分画に血管透過作用を示す物質を見出したので, その精製を行い2, 3の性質につき検討した. この物質は粗酸溶性糖蛋白質分画からCMセルロース・カラムクロマトグラフィーを行うことにより部分的に精製された. その分子量は推定6万前後と思われる. Disc 電気泳動および免疫電気泳動にて, この活性分画は Transferin, albumin 成分およびβ-globulin から成ることがわかった.一方 14C-casein digestion method による蛋白分解酵素活性測定にて血管透過活性分画は中性域でのカゼイン水解能を示さない. 血管透過作用については, Histamin などと異なる作用持続の長い性質が明らかにされ, また56℃, 30分の熱処理で失活しない. 以上の成績を中心に既知の血管透過因子との物質的異同について考察し, われわれが得た因子が新しい物質である可能性について示唆した. 加えてかような研究 -動脈病変への生化学的アプローチ- に生じる基本的な問題点についても考察を行った.
ISSN:0386-2682
2185-8284
DOI:10.5551/jat1973.3.4_465