走行するサラブレッドの遊脚期における振動数の調整

歩容は各肢の振動数と位相差で記述でき,多くの歩容に関する研究は各肢の振動数が一致している前提で,主に位相差の制御を議論してきた.しかし,サラブレッドのように前後肢の構造に差があり固有振動数が異なる場合,歩容を実現するためには振動数を一致させる制御も必要である.そこで本研究は,サラブレッドの四肢の振動数を調整するメカニズムを明らかにするため,各肢を合成振子として扱いダイナミクスの観点から前後肢の運動を比較した.実験ではトレッドミル上を走るサラブレッドをモーションキャプチャで計測し,エネルギーに基づいた解析を行い,後肢は主に回転トルクでスイングするのに対し,前肢は後肢に比べ固有振動数が低いためトル...

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Published inバイオメカニズム学会誌 Vol. 41; no. 2; pp. 91 - 97
Main Authors 湯川, 治敏, 太田, 憲, 間, 弘子, 松本, 拓也, 高橋, 敏之, 仰木, 裕嗣
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published バイオメカニズム学会 2017
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ISSN0285-0885
DOI10.3951/sobim.41.2_91

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Summary:歩容は各肢の振動数と位相差で記述でき,多くの歩容に関する研究は各肢の振動数が一致している前提で,主に位相差の制御を議論してきた.しかし,サラブレッドのように前後肢の構造に差があり固有振動数が異なる場合,歩容を実現するためには振動数を一致させる制御も必要である.そこで本研究は,サラブレッドの四肢の振動数を調整するメカニズムを明らかにするため,各肢を合成振子として扱いダイナミクスの観点から前後肢の運動を比較した.実験ではトレッドミル上を走るサラブレッドをモーションキャプチャで計測し,エネルギーに基づいた解析を行い,後肢は主に回転トルクでスイングするのに対し,前肢は後肢に比べ固有振動数が低いためトルク発揮と共に振子長の短縮も行い,よりエネルギーを増加させ振動を加速させることを明らかにした.以上より,サラブレッドは各肢の力学的差異を補償しながら,各肢の振動数を調整して走行していることが示唆された.
ISSN:0285-0885
DOI:10.3951/sobim.41.2_91