胸腔内に突出した肋骨骨折骨片による遅発性外傷性血胸の1例

症例は85歳,女性.自宅のベッドから転落して左側胸部痛を主訴に受診した.胸部X線で左気胸を認め,胸部CTでは左多発肋骨骨折と肺内血腫を認め,少量の胸水も貯留しており経過観察目的に入院となった.第2病日の胸部X線で気胸や胸水の増悪はなかったが,第5病日の血液検査でヘモグロビン値の軽度低下を認めた.胸部造影CTで肺内血腫は改善していたが,肋骨骨折端は胸腔内に突出し左上葉に穿孔していた.左胸水も増加しており,遅発性外傷性血胸と診断した.骨折端は左肺動脈に近接しており,肺の再膨張で骨折端による肺穿孔が進行して肺損傷が増悪する可能性があり,緊急で胸腔鏡下手術を施行した.肋骨骨折端による肺穿孔部位は肺と壁...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 85; no. 10; pp. 1371 - 1375
Main Authors 有村, 隆明, 白井, 順也, 堤, 謙二, 藤本, 剛士
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2024
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.85.1371

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Summary:症例は85歳,女性.自宅のベッドから転落して左側胸部痛を主訴に受診した.胸部X線で左気胸を認め,胸部CTでは左多発肋骨骨折と肺内血腫を認め,少量の胸水も貯留しており経過観察目的に入院となった.第2病日の胸部X線で気胸や胸水の増悪はなかったが,第5病日の血液検査でヘモグロビン値の軽度低下を認めた.胸部造影CTで肺内血腫は改善していたが,肋骨骨折端は胸腔内に突出し左上葉に穿孔していた.左胸水も増加しており,遅発性外傷性血胸と診断した.骨折端は左肺動脈に近接しており,肺の再膨張で骨折端による肺穿孔が進行して肺損傷が増悪する可能性があり,緊急で胸腔鏡下手術を施行した.肋骨骨折端による肺穿孔部位は肺と壁側胸膜が癒着しており,穿孔部の癒着を剥離せずに肺部分切除を行い止血した.部分切除後に穿孔部の癒着を剥離すると,第6肋骨の骨端が胸腔内に突出しており,骨折部直上で小開胸を行い肋骨部分切除と断端形成を行った.術後は第2病日にドレーンを抜去して第6病日に退院した.肋骨骨折端による遅発性外傷性血胸は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.85.1371