腸閉塞症状で発症し乳糜腹水を呈した原発性小腸軸捻の1例

小腸軸捻の随伴症状として乳糜腹水を呈する症例は稀である.今回,腸閉塞症状で発症し乳糜腹水を呈した原発性小腸軸捻の1例を経験したので報告する.症例は69歳,男性.突然の上腹部痛を認め,救急搬送された.腹部造影CTで,whirl signを認め,小腸間膜の動脈血流は保たれていたが,上腸間膜静脈の血流が途絶し,広範な小腸間膜のうっ血を認めた.また,腹水の貯留も認め,小腸軸捻による腸管の血流障害が否定できないため,緊急腹腔鏡手術を施行した.腹腔内を観察すると小腸の軸捻は認めず,自然に解除されていたが,上部小腸の腸間膜は白色浮腫状に変化し,乳糜腹水を認めた.腸管の不可逆的な虚血の所見はなく,審査腹腔鏡の...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 81; no. 7; pp. 1319 - 1323
Main Authors 松本, 充生, 小林, 敦夫, 藤代, 雅巳, 李, 世翼, 高田, 厚, 河原, 正樹
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2020
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Summary:小腸軸捻の随伴症状として乳糜腹水を呈する症例は稀である.今回,腸閉塞症状で発症し乳糜腹水を呈した原発性小腸軸捻の1例を経験したので報告する.症例は69歳,男性.突然の上腹部痛を認め,救急搬送された.腹部造影CTで,whirl signを認め,小腸間膜の動脈血流は保たれていたが,上腸間膜静脈の血流が途絶し,広範な小腸間膜のうっ血を認めた.また,腹水の貯留も認め,小腸軸捻による腸管の血流障害が否定できないため,緊急腹腔鏡手術を施行した.腹腔内を観察すると小腸の軸捻は認めず,自然に解除されていたが,上部小腸の腸間膜は白色浮腫状に変化し,乳糜腹水を認めた.腸管の不可逆的な虚血の所見はなく,審査腹腔鏡のみで手術を終了した.乳糜腹水を呈する腸管の血流障害では,虚血は軽度で,腸管切除を必要としないことが多く,腹腔鏡手術はいい適応であると考えられる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.81.1319