感染性大動脈瘤が当初疑われた,非特異的炎症反応を伴う成人動脈管憩室動脈瘤の1例
成人動脈管憩室動脈瘤はきわめて稀な疾患だが破裂リスクが高く,早期の手術適応が推奨される.今回,動脈瘤手術を行い,動脈管憩室動脈瘤との診断に至った1例を経験した.症例は24歳男性.発熱および胸背部痛を主訴に他院を受診した.採血上は炎症反応の亢進がみられ,CTでは弓部大動脈に嚢状瘤を認めた.感染性大動脈瘤の疑いとして当院へ緊急搬送となり,動脈瘤の拡大を認めたため,第3病日にリファンピシン浸透の人工血管にて下行大動脈置換術を行った.術前・術後で提出した血液培養検体・術中組織検体はすべて陰性で,病理組織上も非特異的炎症反応のみで細菌感染を疑う所見は認められず,抗菌薬は術後10日目に中止した.若齢であり...
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Published in | 日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 50; no. 1; pp. 61 - 64 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
15.01.2021
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Summary: | 成人動脈管憩室動脈瘤はきわめて稀な疾患だが破裂リスクが高く,早期の手術適応が推奨される.今回,動脈瘤手術を行い,動脈管憩室動脈瘤との診断に至った1例を経験した.症例は24歳男性.発熱および胸背部痛を主訴に他院を受診した.採血上は炎症反応の亢進がみられ,CTでは弓部大動脈に嚢状瘤を認めた.感染性大動脈瘤の疑いとして当院へ緊急搬送となり,動脈瘤の拡大を認めたため,第3病日にリファンピシン浸透の人工血管にて下行大動脈置換術を行った.術前・術後で提出した血液培養検体・術中組織検体はすべて陰性で,病理組織上も非特異的炎症反応のみで細菌感染を疑う所見は認められず,抗菌薬は術後10日目に中止した.若齢であり動脈硬化性変化がなく,外傷歴がないこと,術中に動脈瘤内への境界明瞭な入口部がみられたこと,入口部の位置が動脈管索の付着部であったことから,総合的に非特異的炎症反応を伴う成人動脈管憩室動脈瘤と診断した.経過は良好で術後2年3カ月が経過し,炎症所見の再発はなく社会復帰している. |
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ISSN: | 0285-1474 1883-4108 |
DOI: | 10.4326/jjcvs.50.61 |