パンコースト肺癌外科治療30年の経験

パンコースト肺癌は肺尖部胸壁に浸潤し,進展すればパンコースト症候群を呈する予後不良な疾患である.従来,術前放射線療法が標準治療とされたが決して良好な成績ではなかった.著者は肺尖部を前方,正中,後方の3つに分類し腫瘍の局在によってアプローチを選択することが重要と考えた.後方から正中を占拠するパンコースト肺癌にはhookアプローチを開発し,前方を占拠する肺癌には前方アプロ―チにて完全切除率の向上に努めた.さらに早くから術前化学放射線療法を導入し治療成績の改善を図った.86例のパンコースト肺癌を経験し全体の5年生存率は48.7%(MST49.6カ月)であった.2000年までの前後期で分けると後期(n...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 83; no. 5; pp. 807 - 814
Main Author 丹羽, 宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 2022
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Summary:パンコースト肺癌は肺尖部胸壁に浸潤し,進展すればパンコースト症候群を呈する予後不良な疾患である.従来,術前放射線療法が標準治療とされたが決して良好な成績ではなかった.著者は肺尖部を前方,正中,後方の3つに分類し腫瘍の局在によってアプローチを選択することが重要と考えた.後方から正中を占拠するパンコースト肺癌にはhookアプローチを開発し,前方を占拠する肺癌には前方アプロ―チにて完全切除率の向上に努めた.さらに早くから術前化学放射線療法を導入し治療成績の改善を図った.86例のパンコースト肺癌を経験し全体の5年生存率は48.7%(MST49.6カ月)であった.2000年までの前後期で分けると後期(n=49)の5年生存率は62.3%(MST未達)と前期の31.7%(MST12.7M)より有意に良好であった.腫瘍局在によるアプローチの選択,術前化学放射線療法の導入により劇的に予後を改善することができた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.83.807