歯科大学附属クリニックにおける認知症高齢患者への静脈内鎮静法の実態

目的:日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックは,年間約1万人の患者を診療し,その多くは高齢者で基礎疾患に加え複数の併存疾患を抱える。初診患者の約60%が75歳以上であり,17%に認知症が認められる。認知症は重症化に伴い,見当識障害や指示理解が困難になることから,治療に対し拒否行動を起こすことが多く,その際には何らかの行動調整の介入が必要である。 当クリニックでは認知症高齢患者に対し,薬物的行動調整として静脈内鎮静法下にて歯科治療を行っている。今回,我々は2017年4月から2023年12月の期間に静脈内鎮静法下で歯科治療を受けた認知症高齢患者20名について,患者概要と処置内容の実態を明...

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Published in老年歯科医学 Vol. 39; no. 3; pp. 156 - 161
Main Authors 宮下, 直也, 山田, 裕之, 青嶋, 美紀, 菊谷, 武, 田村, 文誉, 砂田, 勝久, 戸原, 雄, 岸, 知仁, 仲澤, 裕次郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本老年歯科医学会 31.12.2024
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ISSN0914-3866
1884-7323
DOI10.11259/jsg.39.3_156

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Summary:目的:日本歯科大学口腔リハビリテーション多摩クリニックは,年間約1万人の患者を診療し,その多くは高齢者で基礎疾患に加え複数の併存疾患を抱える。初診患者の約60%が75歳以上であり,17%に認知症が認められる。認知症は重症化に伴い,見当識障害や指示理解が困難になることから,治療に対し拒否行動を起こすことが多く,その際には何らかの行動調整の介入が必要である。 当クリニックでは認知症高齢患者に対し,薬物的行動調整として静脈内鎮静法下にて歯科治療を行っている。今回,我々は2017年4月から2023年12月の期間に静脈内鎮静法下で歯科治療を受けた認知症高齢患者20名について,患者概要と処置内容の実態を明らかにすることを目的に後ろ向き調査を行った。 方法:診療録および麻酔記録を基に,患者情報,歯科処置内容,静脈内鎮静法の内容などについて調査した。 結果と考察:静脈内鎮静法下で行われた歯科処置は90%が抜歯処置であり,そのうちの80%が2歯以上の多数歯抜歯であった。予定されたすべての処置が,静脈内鎮静法下で行うことができ,術中および術後の偶発症もみられなかった。また,患者の多くがその後,義歯製作や保存処置,歯周処置などを通常管理下にて継続的に受療できたことから,静脈内鎮静法を応用した歯科治療の有用性を示すことができた。
ISSN:0914-3866
1884-7323
DOI:10.11259/jsg.39.3_156