頚部軟部組織の解剖学的層構造に基づいたCEAの剝離 ─高位病変に対応するために

内頚動脈内膜剝離術において内頚動脈遠位部を十分に確保するためには,解剖学的層構造に基づいた耳下腺(parotid grand:PG)ならびに retromandibular space(RS)上方部の剝離操作が重要となる.解剖と手術操作のポイントは以下のとおりである.①大耳介神経を指標にPG下縁を同定する.②深頚筋膜(deep cervical fascia:DCF)によってコンパートメント状に覆われたPGにDCFをつけた状態で,胸鎖乳突筋(sternocleidomastoid muscle:SCM)から剝離してSCMの前縁を上方まで露出する.③RSには,表層から順にPG,DCF(前上方で顎...

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Published in脳卒中の外科 Vol. 53; no. 2; pp. 119 - 126
Main Authors 今田, 裕尊, 塩田, 大成
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中の外科学会 2025
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ISSN0914-5508
1880-4683
DOI10.2335/scs.53.119

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Summary:内頚動脈内膜剝離術において内頚動脈遠位部を十分に確保するためには,解剖学的層構造に基づいた耳下腺(parotid grand:PG)ならびに retromandibular space(RS)上方部の剝離操作が重要となる.解剖と手術操作のポイントは以下のとおりである.①大耳介神経を指標にPG下縁を同定する.②深頚筋膜(deep cervical fascia:DCF)によってコンパートメント状に覆われたPGにDCFをつけた状態で,胸鎖乳突筋(sternocleidomastoid muscle:SCM)から剝離してSCMの前縁を上方まで露出する.③RSには,表層から順にPG,DCF(前上方で顎二腹筋に到達する),脂肪組織に覆われた深頚リンパ節群,内頚静脈ならびにその分枝,舌下神経ならびに頚神経ワナ,頚動脈が存在する.このため,DCFと深頚リンパ節を覆う脂肪組織との間で剝離を進めれば,RS内にある耳下腺を損傷することなく,顎二腹筋後腹にも安全に到達できる.④早期に顎二腹筋後腹をみつけ,その直下で舌下神経や外頚動脈を同定することで,術野全体の層構造が明瞭となり,深頚リンパ節群と内頚静脈とを一塊として剝離翻転する切離ラインや深さを見極めることができる.このように,頚部軟部組織の層構造に基づいた剝離を行うことで,内頚動脈遠位部を確保するための術野展開を安全確実に再現できる.
ISSN:0914-5508
1880-4683
DOI:10.2335/scs.53.119