顔面神経麻痺で発症した膀胱癌髄膜癌腫症の 1 例
顔面神経麻痺は Bell 麻痺と Ramsay Hunt 症候群によるもので大多数を占め、腫瘍性病変によるものの頻度は少ない。われわれは右顔面神経麻痺で発症した膀胱癌の髄膜癌腫症の症例を経験したので報告する。症例は 59 歳、男性。右顔面神経麻痺を発症し、他院でステロイド治療が行われていた。顔面神経麻痺発症の半年前に表在性膀胱癌に対して膀胱全摘術の既往があった。治療開始 2 カ月後、顔面神経麻痺の改善を認めず、また嚥下障害も生じたため当科を受診した。頭部造影 MRI にて中耳、乳突洞の軟部組織陰影と中~後頭蓋窩の硬膜の肥厚を認め、耳漏からの細胞診が class Ⅴであった。乳突洞試験開放を行い...
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Published in | 耳鼻と臨床 Vol. 62; no. 2; pp. 43 - 47 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
耳鼻と臨床会
20.03.2016
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Subjects | |
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ISSN | 0447-7227 2185-1034 |
DOI | 10.11334/jibi.62.2_43 |
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Summary: | 顔面神経麻痺は Bell 麻痺と Ramsay Hunt 症候群によるもので大多数を占め、腫瘍性病変によるものの頻度は少ない。われわれは右顔面神経麻痺で発症した膀胱癌の髄膜癌腫症の症例を経験したので報告する。症例は 59 歳、男性。右顔面神経麻痺を発症し、他院でステロイド治療が行われていた。顔面神経麻痺発症の半年前に表在性膀胱癌に対して膀胱全摘術の既往があった。治療開始 2 カ月後、顔面神経麻痺の改善を認めず、また嚥下障害も生じたため当科を受診した。頭部造影 MRI にて中耳、乳突洞の軟部組織陰影と中~後頭蓋窩の硬膜の肥厚を認め、耳漏からの細胞診が class Ⅴであった。乳突洞試験開放を行い組織診断を確定した。表在性膀胱癌の髄膜癌腫症は非常にまれであるものの、本症例では、頑強な頭痛、難治性の顔面神経麻痺、多発脳神経麻痺といった非典型的な症状を生じていたため、当初より腫瘍性麻痺を念頭に精査をすすめ、適切な化学療法を施行し得た。ステロイド治療に反応の乏しい顔面神経麻痺の場合、腫瘍性麻痺の可能性に留意する必要性を再認識した。 |
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ISSN: | 0447-7227 2185-1034 |
DOI: | 10.11334/jibi.62.2_43 |