人はなぜ依存症になるのか 子どもの薬物乱用

「I. はじめに」最初に, 根本的な問いを発してみたい. 曰く, 「人はなぜ依存症になるのか」. よくある回答としては次のようなものがあろう. 「人が依存症になるのは, その人が, 薬物と聞けば手当たり次第に何でも手を出す, 衝動的で自己破壊的な性格の持ち主だからだ」と. この仮説に反駁することはたやすい. というのも薬物依存者の多くは, 数種の薬物やアルコールを試した後, 最終的に一つか二つの種類の「自分好みの物質」に落ち着くというパターンをとるからである. 要するに, 薬物依存者は, 決して「手当たり次第」などではなく, 自分なりの基準にもとづいて主体的に選択しているのである. では, 次...

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Published in児童青年精神医学とその近接領域 Vol. 59; no. 3; pp. 278 - 282
Main Author 松本, 俊彦
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本児童青年精神医学会 01.06.2018
日本児童青年精神医学会
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ISSN0289-0968
2424-1652
DOI10.20615/jscap.59.3_278

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Summary:「I. はじめに」最初に, 根本的な問いを発してみたい. 曰く, 「人はなぜ依存症になるのか」. よくある回答としては次のようなものがあろう. 「人が依存症になるのは, その人が, 薬物と聞けば手当たり次第に何でも手を出す, 衝動的で自己破壊的な性格の持ち主だからだ」と. この仮説に反駁することはたやすい. というのも薬物依存者の多くは, 数種の薬物やアルコールを試した後, 最終的に一つか二つの種類の「自分好みの物質」に落ち着くというパターンをとるからである. 要するに, 薬物依存者は, 決して「手当たり次第」などではなく, 自分なりの基準にもとづいて主体的に選択しているのである. では, 次のような回答はどうであろうか? 「依存症の原因は, 性格などではない, あくまでも依存性物質 - 脳に強烈な快感をもたらし, その快感を脳に刻印付けして, 脳を支配してしまう物質 - に手を出したこと自体にある」.
ISSN:0289-0968
2424-1652
DOI:10.20615/jscap.59.3_278