急性腹症を呈した後腹膜嚢胞性リンパ管腫の1例

急性腹症を呈し,緊急手術を要した後腹膜原発の嚢胞性リンパ管腫を経験したので報告する.症例は24歳男性.発熱後に腹部膨満,腹痛が出現し,当科を受診した.腹部を診察すると,中下腹部は著明に膨隆,緊満し,強い圧痛を認めた.腹部単純X線写真では,横行結腸およびS状結腸ガス像は右上方に圧排されていた.腹部超音波検査, CT検査では,中下腹部,骨盤内にかけての巨大多房性嚢胞性病変を認めた.出血所見,充実部は認めなかった.後腹膜嚢胞性腫瘍が疑われたが,その急激な経過より炎症性病因の関与も疑われた.鎮痛剤にても腹痛の改善が得られず,同日緊急手術を施行した.腹腔内には最大径30cmの表面平滑な多房性嚢胞性腫瘤を...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 59; no. 12; pp. 3176 - 3179
Main Authors 小松, 永二, 濱谷, 弘康, 石塚, 直樹, 高崎, 健, 今泉, 俊秀
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.12.1998
Subjects
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.59.3176

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Summary:急性腹症を呈し,緊急手術を要した後腹膜原発の嚢胞性リンパ管腫を経験したので報告する.症例は24歳男性.発熱後に腹部膨満,腹痛が出現し,当科を受診した.腹部を診察すると,中下腹部は著明に膨隆,緊満し,強い圧痛を認めた.腹部単純X線写真では,横行結腸およびS状結腸ガス像は右上方に圧排されていた.腹部超音波検査, CT検査では,中下腹部,骨盤内にかけての巨大多房性嚢胞性病変を認めた.出血所見,充実部は認めなかった.後腹膜嚢胞性腫瘍が疑われたが,その急激な経過より炎症性病因の関与も疑われた.鎮痛剤にても腹痛の改善が得られず,同日緊急手術を施行した.腹腔内には最大径30cmの表面平滑な多房性嚢胞性腫瘤を認め,発生部位は膵下縁を中心とした後腹膜であった.膵後面門脈周囲に海綿状に発育しており,同部一部遺残にて可及的切除した.腫瘤内部は多房性で,内容は淡黄色漿液であった.病理学的診断は,嚢胞性リンパ管腫であった.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.59.3176