開腹術後の腸管運動に関与する因子-術後腸運動改善に対する臨床的研究

胃癌に対して定型的胃切除術を受けた患者94症例を対象として, 術後の腸管運動とそれに関与すると思われる因子について比較検討し, 次の結果を得た. 1. 年齢が長ずるほど排ガス時間は延長し, 年齢と排ガス時間には正の相関が存在した. 2. 男性は女性に比べて有意に排ガス時間は短かった. 3. 手術時間が長くなるほど排ガス時間は延長し, 明らかな正の相関が認められた. 4. 術後腸管麻痺の良好な快復を得るためにはSerum protein 6.1g/dl以上, Albumin 3.1g/dl以上に保つべきである. 5. Albuminの術前からの減少幅が小さいほど術後の腸管運動は保持される. 緒言...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 8; no. 3; pp. 219 - 225
Main Authors 木元正利, 今井博之, 長野秀樹, 瀬尾泰雄, 郡家信晴, 野上厚志, 岡部功, 山本康久, 堀谷喜公, 佐野開三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1982
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ISSN0386-5924
DOI10.11482/kmj-j8(3)219

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Summary:胃癌に対して定型的胃切除術を受けた患者94症例を対象として, 術後の腸管運動とそれに関与すると思われる因子について比較検討し, 次の結果を得た. 1. 年齢が長ずるほど排ガス時間は延長し, 年齢と排ガス時間には正の相関が存在した. 2. 男性は女性に比べて有意に排ガス時間は短かった. 3. 手術時間が長くなるほど排ガス時間は延長し, 明らかな正の相関が認められた. 4. 術後腸管麻痺の良好な快復を得るためにはSerum protein 6.1g/dl以上, Albumin 3.1g/dl以上に保つべきである. 5. Albuminの術前からの減少幅が小さいほど術後の腸管運動は保持される. 緒言 手術, 特に全身麻酔下に施行される比較的侵襲の大きい手術後に腸運動が障害され, 経口摂取開始の遅延に基づく栄養状態の低下によって, 手術からの回復が遅れ, 思わぬ合併症の発生を経験することがある. 術後における腸管運動の改善を目的とした種々の薬剤が研究開発され, 日常臨床に使用されある程度の成果をあげているが, 術後の腸管運動には生体側の因子が関与することも考えられ, この点についての検討がなされなければならない. しかしながら, それらの因子について実際に関係を明らかにした報告は少ない. 今回, われわれは術後の検査のパラメーターと腸運動についてretrospectiveに検索し, 若干の知見を得たので報告する.
ISSN:0386-5924
DOI:10.11482/kmj-j8(3)219