脳幹脳炎の2例

脳幹に主座を有する脳炎の2例を報告した. 本2例の臨床的特徴としては, 1)成人発症であり, 2)先行する上気道感染症状が存在し, 3)急速な経過と改善傾向を有しており, 4)髄液にてリンパ球優位の細胞増多と, 蛋白増加などの炎症所見をみとめ, 5)脳幹部の病変が考えられた. したがって本2例は, Bickerstaffの述べたbrainstem encepalitisの範疇に入るものとして呈示した. 脳幹にその主座を有する炎症性病変は, 一般に脳幹脳炎と総称されているが, 我が国と海外ではその概念に相異が存在する. これらの脳幹脳炎の成因は未だ明らかではないが, 本2例においてはウイルス感染...

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Published in川崎医学会誌 Vol. 9; no. 3; pp. 310 - 315
Main Authors 東靖人, 安田雄, 守本研二, 寺尾章
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 川崎医学会 1983
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Summary:脳幹に主座を有する脳炎の2例を報告した. 本2例の臨床的特徴としては, 1)成人発症であり, 2)先行する上気道感染症状が存在し, 3)急速な経過と改善傾向を有しており, 4)髄液にてリンパ球優位の細胞増多と, 蛋白増加などの炎症所見をみとめ, 5)脳幹部の病変が考えられた. したがって本2例は, Bickerstaffの述べたbrainstem encepalitisの範疇に入るものとして呈示した. 脳幹にその主座を有する炎症性病変は, 一般に脳幹脳炎と総称されているが, 我が国と海外ではその概念に相異が存在する. これらの脳幹脳炎の成因は未だ明らかではないが, 本2例においてはウイルス感染症に加えて, 脱髄性疾患の可能性もあることを示唆した.「はじめに」脳幹脳炎(Brainstem encephalitis)は脳幹にその主座を有する炎症性疾患の総称である. 今回我々は臨床的に脳幹脳炎と考えられる2例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
ISSN:0386-5924
DOI:10.11482/kmj-j9(3)310