舌・口底癌切除後再建症例の術後機能に関する客観的評価 多施設共同研究
この多施設共同研究は，舌・口底癌切除と有茎あるいは血管柄付き遊離皮弁による再建を受けた患者の術後言語，咀嚼，嚥下機能を客観的に評価した。日本国内13施設から計150名の患者が登録され，切除部位により以下の三群：側方型（L群）109名；前方型（A群）20名；および混合型（C群）21名，に分けられた。L群はさらに3つの亜群に，またA群は2つの亜群に，切除範囲の大きさにより細分類された。再建は86例が遊離前腕皮弁（RFF）により，29例が遊離腹直筋（RAMCF）により，17例が大胸筋皮弁（PMMCF）により，7例が頸部島状皮弁（CIF）により，6例が前外側大腿皮弁（ALTF）により，5例がその他によ...
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| Published in | 日本口腔腫瘍学会誌 Vol. 26; no. 1; pp. 1 - 16 |
|---|---|
| Main Authors | , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , , |
| Format | Journal Article |
| Language | Japanese |
| Published |
一般社団法人 日本口腔腫瘍学会
15.03.2014
日本口腔腫瘍学会 |
| Subjects | |
| Online Access | Get full text |
| ISSN | 0915-5988 1884-4995 |
| DOI | 10.5843/jsot.26.1 |
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| Abstract | この多施設共同研究は，舌・口底癌切除と有茎あるいは血管柄付き遊離皮弁による再建を受けた患者の術後言語，咀嚼，嚥下機能を客観的に評価した。日本国内13施設から計150名の患者が登録され，切除部位により以下の三群：側方型（L群）109名；前方型（A群）20名；および混合型（C群）21名，に分けられた。L群はさらに3つの亜群に，またA群は2つの亜群に，切除範囲の大きさにより細分類された。再建は86例が遊離前腕皮弁（RFF）により，29例が遊離腹直筋（RAMCF）により，17例が大胸筋皮弁（PMMCF）により，7例が頸部島状皮弁（CIF）により，6例が前外側大腿皮弁（ALTF）により，5例がその他によりなされた。術後機能は発語および会話明瞭度，咀嚼機能は発色ガム法21）と感圧シート，嚥下機能は水のみテストを用いて客観的に評価された。 L群の結果では，切除範囲は言語機能にある程度影響したが，咀嚼機能には影響しなかった。比較的狭い範囲の舌を切除された患者の中には水飲みテストで「むせ有り」症例が観察された。舌部分切除を受けた患者の中では，RFF，CIFのほうがPMMCFより，ガム検査で良い結果を示した。前方2/3の舌半切患者においてRAMCFとRFFのどちらが優れるかは不明確だった。舌半切患者でALTFは他の皮弁を用いたものより高い機能を示した。 A群において切除範囲は言語機能にほとんど影響しなかったが，咀嚼機能，嚥下機能には影響した。A群の切除が舌前方1/3以内に限定される場合の再建材料としてはRFFのほうがRAMCFよりも嚥下機能の維持に有用だった。 C群は言語，咀嚼機能がもっとも低かった。嚥下機能に関しては，「むせ有り」症例の割合は他群より高かったが，水飲みテストでC群はA群より良い結果だった。皮弁採取部位の違いは機能結果に影響しなかった。 今後は，舌・口底癌患者におけるより高い術後機能の獲得を目指して皮弁縫合手技を工夫し，機能訓練の意義を高めるために，神経温存や再建，舌骨吊上げの有用性について検討すべきである。 |
|---|---|
| AbstractList | [要旨]: この多施設共同研究は, 舌・口底癌切除と有茎あるいは血管柄付き遊離皮弁による再建を受けた患者の術後言語, 咀嚼, 嚥下機能を客観的に評価した. 日本国内13施設から計150名の患者が登録され, 切除部位により以下の三群: 側方型(L群) 109名; 前方型(A群) 20名; および混合型(C群) 21名, に分けられた. L群はさらに3つの亜群に, またA群は2つの亜群に, 切除範囲の大きさにより細分類された. 再建は86例が遊離前腕皮弁(RFF)により, 29例が遊離腹直筋(RAMCF)により, 17例が大胸筋皮弁(PMMCF)により, 7例が頸部島状皮弁(CIF)により, 6例が前外側大腿皮弁(ALTF)により, 5例がその他によりなされた. 術後機能は発語および会話明瞭度, 咀嚼機能は発色ガム法21)と感圧シート, 嚥下機能は水のみテストを用いて客観的に評価された. L群の結果では, 切除範囲は言語機能にある程度影響したが, 咀嚼機能には影響しなかった. 比較的狭い範囲の舌を切除された患者の中には水飲みテストで「むせ有り」症例が観察された. 舌部分切除を受けた患者の中では, RFF, CIFのほうがPMMCFより, ガム検査で良い結果を示した. 前方2/3の舌半切患者においてRAMCFとRFFのどちらが優れるかは不明確だった. 舌半切患者でALTFは他の皮弁を用いたものより高い機能を示した. A群において切除範囲は言語機能にほとんど影響しなかったが, 咀嚼機能, 嚥下機能には影響した. A群の切除が舌前方1/3以内に限定される場合の再建材料としてはRFFのほうがRAMCFよりも嚥下機能の維持に有用だった. C群は言語, 咀嚼機能がもっとも低かった. 嚥下機能に関しては, 「むせ有り」症例の割合は他群より高かったが, 水飲みテストでC群はA群より良い結果だった. 皮弁採取部位の違いは機能結果に影響しなかった. 今後は, 舌・口底癌患者におけるより高い術後機能の獲得を目指して皮弁縫合手技を工夫し, 機能訓練の意義を高めるために, 神経温存や再建, 舌骨吊上げの有用性について検討すべきである. この多施設共同研究は，舌・口底癌切除と有茎あるいは血管柄付き遊離皮弁による再建を受けた患者の術後言語，咀嚼，嚥下機能を客観的に評価した。日本国内13施設から計150名の患者が登録され，切除部位により以下の三群：側方型（L群）109名；前方型（A群）20名；および混合型（C群）21名，に分けられた。L群はさらに3つの亜群に，またA群は2つの亜群に，切除範囲の大きさにより細分類された。再建は86例が遊離前腕皮弁（RFF）により，29例が遊離腹直筋（RAMCF）により，17例が大胸筋皮弁（PMMCF）により，7例が頸部島状皮弁（CIF）により，6例が前外側大腿皮弁（ALTF）により，5例がその他によりなされた。術後機能は発語および会話明瞭度，咀嚼機能は発色ガム法21）と感圧シート，嚥下機能は水のみテストを用いて客観的に評価された。 L群の結果では，切除範囲は言語機能にある程度影響したが，咀嚼機能には影響しなかった。比較的狭い範囲の舌を切除された患者の中には水飲みテストで「むせ有り」症例が観察された。舌部分切除を受けた患者の中では，RFF，CIFのほうがPMMCFより，ガム検査で良い結果を示した。前方2/3の舌半切患者においてRAMCFとRFFのどちらが優れるかは不明確だった。舌半切患者でALTFは他の皮弁を用いたものより高い機能を示した。 A群において切除範囲は言語機能にほとんど影響しなかったが，咀嚼機能，嚥下機能には影響した。A群の切除が舌前方1/3以内に限定される場合の再建材料としてはRFFのほうがRAMCFよりも嚥下機能の維持に有用だった。 C群は言語，咀嚼機能がもっとも低かった。嚥下機能に関しては，「むせ有り」症例の割合は他群より高かったが，水飲みテストでC群はA群より良い結果だった。皮弁採取部位の違いは機能結果に影響しなかった。 今後は，舌・口底癌患者におけるより高い術後機能の獲得を目指して皮弁縫合手技を工夫し，機能訓練の意義を高めるために，神経温存や再建，舌骨吊上げの有用性について検討すべきである。 |
| Author | 大倉, 正也 冨塚, 謙一 千葉, 博茂 岡部, 貞夫 天笠, 光雄 小野, 貢伸 松浦, 正朗 藤田, 浄秀 代田, 達夫 大部, 一成 里見, 貴史 山本, 友美 藤林, 孝司 木下, 靭彦 大関, 悟 古郷, 幹彦 瀬戸, 晥一 戸塚, 靖則 大野, 康亮 鄭, 漢忠 細田, 超 山下, 夕香里 佐藤, 徹 飯田, 征二 海野, 智 浅田, 洸一 石橋, 克禮 松井, 義郎 吉増, 秀實 |
| Author_xml | – sequence: 1 fullname: 吉増, 秀實 organization: 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康支援口腔保健衛生学分野 – sequence: 1 fullname: 山下, 夕香里 organization: 帝京平成大学健康メディカル学部言語聴覚学科 – sequence: 1 fullname: 瀬戸, 晥一 organization: 鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座 – sequence: 1 fullname: 松井, 義郎 organization: 昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学教室 – sequence: 1 fullname: 藤林, 孝司 organization: 獨協医科大学口腔外科学講座 – sequence: 1 fullname: 天笠, 光雄 organization: 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面外科学分野 – sequence: 1 fullname: 大倉, 正也 organization: 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔病因病態制御学講座第一口腔外科学教室 – sequence: 1 fullname: 古郷, 幹彦 organization: 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔病因病態制御学講座第一口腔外科学教室 – sequence: 1 fullname: 細田, 超 organization: 川崎医科大学附属病院歯科・口腔外科 – sequence: 1 fullname: 大野, 康亮 organization: 昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学教室 – sequence: 1 fullname: 松浦, 正朗 organization: 福岡歯科大学口腔医療センター – sequence: 1 fullname: 山本, 友美 organization: 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔病因病態制御学講座第一口腔外科学教室 – sequence: 1 fullname: 代田, 達夫 organization: 昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学教室 – sequence: 1 fullname: 千葉, 博茂 organization: 東京医科大学医学部口腔外科学講座 – sequence: 1 fullname: 石橋, 克禮 organization: 鶴見大学歯学部口腔内科学講座 – sequence: 1 fullname: 小野, 貢伸 organization: 北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座口腔顎顔面外科学 – sequence: 1 fullname: 岡部, 貞夫 organization: 日本歯科大学附属病院口腔がん診療センター – sequence: 1 fullname: 鄭, 漢忠 organization: 北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座口腔顎顔面外科学 – sequence: 1 fullname: 佐藤, 徹 organization: 鶴見大学歯学部口腔内科学講座 – sequence: 1 fullname: 大部, 一成 organization: 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学分野 – sequence: 1 fullname: 藤田, 浄秀 organization: 横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学 – sequence: 1 fullname: 冨塚, 謙一 organization: 山形大学医学部歯科口腔・形成外科学講座 – sequence: 1 fullname: 海野, 智 organization: 横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学 – sequence: 1 fullname: 大関, 悟 organization: 福岡歯科大学口腔顎顔面外科学講座口腔腫瘍学分野 – sequence: 1 fullname: 木下, 靭彦 organization: 神奈川歯科大学高次脳・口腔科学センター – sequence: 1 fullname: 戸塚, 靖則 organization: 北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座口腔顎顔面外科学 – sequence: 1 fullname: 里見, 貴史 organization: 東京医科大学医学部口腔外科学講座 – sequence: 1 fullname: 浅田, 洸一 organization: 鶴見大学歯学部口腔内科学講座 – sequence: 1 fullname: 飯田, 征二 organization: 岡山大学医歯薬学総合研究科顎口腔再建外科学分野 |
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| Copyright | 2014 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 |
| Copyright_xml | – notice: 2014 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 |
| CorporateAuthor | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面外科学分野 東京医科大学医学部口腔外科学講座 岡山大学医歯薬学総合研究科顎口腔再建外科学分野 昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学教室 日本歯科大学附属病院口腔がん診療センター 福岡歯科大学口腔医療センター 鶴見大学歯学部口腔内科学講座 鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座 神奈川歯科大学高次脳・口腔科学センター 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学分野 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔病因病態制御学講座第一口腔外科学教室 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康支援口腔保健衛生学分野 帝京平成大学健康メディカル学部言語聴覚学科 香川大学医学部歯科口腔外科学講座 山形大学医学部歯科口腔・形成外科学講座 埼玉県立がんセンター口腔外科 川崎医科大学附属病院歯科・口腔外科 福岡歯科大学口腔顎顔面外科学講座口腔腫瘍学分野 北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座口腔顎顔面外科学 横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学 獨協医科大学口腔外科学講座 |
| CorporateAuthor_xml | – name: 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科健康支援口腔保健衛生学分野 – name: 埼玉県立がんセンター口腔外科 – name: 帝京平成大学健康メディカル学部言語聴覚学科 – name: 川崎医科大学附属病院歯科・口腔外科 – name: 福岡歯科大学口腔医療センター – name: 横浜市立大学大学院医学研究科顎顔面口腔機能制御学 – name: 福岡歯科大学口腔顎顔面外科学講座口腔腫瘍学分野 – name: 九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座顎顔面腫瘍制御学分野 – name: 獨協医科大学口腔外科学講座 – name: 日本歯科大学附属病院口腔がん診療センター – name: 北海道大学大学院歯学研究科口腔病態学講座口腔顎顔面外科学 – name: 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科顎顔面外科学分野 – name: 鶴見大学歯学部口腔顎顔面外科学講座 – name: 鶴見大学歯学部口腔内科学講座 – name: 大阪大学大学院歯学研究科顎口腔病因病態制御学講座第一口腔外科学教室 – name: 岡山大学医歯薬学総合研究科顎口腔再建外科学分野 – name: 神奈川歯科大学高次脳・口腔科学センター – name: 香川大学医学部歯科口腔外科学講座 – name: 昭和大学歯学部顎口腔疾患制御外科学教室 – name: 山形大学医学部歯科口腔・形成外科学講座 – name: 東京医科大学医学部口腔外科学講座 |
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| EISSN | 1884-4995 |
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| Issue | 1 |
| Language | Japanese |
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| PublicationDecade | 2010 |
| PublicationTitle | 日本口腔腫瘍学会誌 |
| PublicationTitleAlternate | 口腔腫瘍 |
| PublicationYear | 2014 |
| Publisher | 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 日本口腔腫瘍学会 |
| Publisher_xml | – name: 一般社団法人 日本口腔腫瘍学会 – name: 日本口腔腫瘍学会 |
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| Snippet | ... [要旨]: この多施設共同研究は, 舌・口底癌切除と有茎あるいは血管柄付き遊離皮弁による再建を受けた患者の術後言語, 咀嚼, 嚥下機能を客観的に評価した. 日本国内13施設から計150名の患者が登録され, 切除部位により以下の三群: 側方型(L群) 109名; 前方型(A群) 20名; および混合型(C群) 21名,... |
| SourceID | medicalonline jstage |
| SourceType | Publisher |
| StartPage | 1 |
| SubjectTerms | 再建 口底 口腔癌 舌 術後機能 |
| Subtitle | 多施設共同研究 |
| Title | 舌・口底癌切除後再建症例の術後機能に関する客観的評価 |
| URI | https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsot/26/1/26_1/_article/-char/ja http://mol.medicalonline.jp/en/journal/download?GoodsID=dy8ortum/2014/002601/001&name=0001-0016j |
| Volume | 26 |
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| ispartofPNX | 日本口腔腫瘍学会誌, 2014/03/15, Vol.26(1), pp.1-16 |
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