脳血栓症発症と血管内皮細胞の抗血栓活性の低下

脳血栓症患者の血管内皮細胞 (EC) の抗血栓活性を評価する一方法として, ヘパリン (60U/kg) を静注し, その前と5分後のβ-thromboglobulin (βTG) とplatelet factor4 (PF4) を測定した.PF4は血小板の凝集に伴い放出され, EC上のヘパリン様分子に結合する.同時にこのヘパリン様分子にはantithrombin IIIも結合しており, ECの抗血栓活性の一翼を担っている.ヘパリン静注5分後にPF4の一過性の上昇 (ΔPF4) がみられたが, このPF4はEC上のヘパリン様分子から流血中に遊離してくるものと考えられ, 従ってΔPF4が高いことは...

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Published in脳卒中 Vol. 10; no. 1; pp. 47 - 53
Main Author 塚里, 孝和
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 一般社団法人 日本脳卒中学会 1988
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ISSN0912-0726
1883-1923
DOI10.3995/jstroke.10.47

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Summary:脳血栓症患者の血管内皮細胞 (EC) の抗血栓活性を評価する一方法として, ヘパリン (60U/kg) を静注し, その前と5分後のβ-thromboglobulin (βTG) とplatelet factor4 (PF4) を測定した.PF4は血小板の凝集に伴い放出され, EC上のヘパリン様分子に結合する.同時にこのヘパリン様分子にはantithrombin IIIも結合しており, ECの抗血栓活性の一翼を担っている.ヘパリン静注5分後にPF4の一過性の上昇 (ΔPF4) がみられたが, このPF4はEC上のヘパリン様分子から流血中に遊離してくるものと考えられ, 従ってΔPF4が高いことはECの抗血栓活性が低いことを示唆するものと考えられた.各症例を, βTGの前値を縦軸に, ΔPF4を横軸に取りプロットすると4typeに分類しえたが, 正常者は86%がtype4 (正常型) にプロットされたのに対し, 慢性期の脳血栓症患者は41%がtype1, 2でECの抗血栓活性低下型を示した.また, 急性期より経過を追うと臨床症状の回復に伴いECの抗血栓活性の回復することが示唆された.
ISSN:0912-0726
1883-1923
DOI:10.3995/jstroke.10.47