肝門部胆管癌と鑑別が困難であった限局性炎症性胆道狭窄の1例

肝門部胆管癌と鑑別が困難であった限局性炎症性胆道狭窄の1例を経験したので報告する. 症例は66歳,男.当院での血液生化学検査で胆道系酵素の高値を指摘され,当科に入院した.貧血,黄疸なく,腹部腫瘤は触知しなかった.腹部CE-CTで肝門部に濃染される腫瘤を認めた. ERCPで左右肝管から総肝管にかけて狭窄像を認めた.腹部血管造影で腫瘤に相当する淡い濃染像を認めた.肝門部胆管癌の診断で肝中央2区域,尾状葉全切除を行った.術後病理組織学的に悪性所見はなく,胆管周囲にはリンパ球と形質細胞を主体とする炎症細胞浸潤と線維芽細胞の増殖を認め,慢性炎症生の胆道狭窄であった. 自験例の胆道狭窄の原因として,細菌性...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 60; no. 4; pp. 1088 - 1091
Main Authors 田代, 征記, 倉立, 真志, 矢田, 清吾, 余喜多, 史郎, 吉田, 禎宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.04.1999
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.60.1088

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Summary:肝門部胆管癌と鑑別が困難であった限局性炎症性胆道狭窄の1例を経験したので報告する. 症例は66歳,男.当院での血液生化学検査で胆道系酵素の高値を指摘され,当科に入院した.貧血,黄疸なく,腹部腫瘤は触知しなかった.腹部CE-CTで肝門部に濃染される腫瘤を認めた. ERCPで左右肝管から総肝管にかけて狭窄像を認めた.腹部血管造影で腫瘤に相当する淡い濃染像を認めた.肝門部胆管癌の診断で肝中央2区域,尾状葉全切除を行った.術後病理組織学的に悪性所見はなく,胆管周囲にはリンパ球と形質細胞を主体とする炎症細胞浸潤と線維芽細胞の増殖を認め,慢性炎症生の胆道狭窄であった. 自験例の胆道狭窄の原因として,細菌性上行性胆管炎が原因となる二次性硬化性胆管炎は否定的であり,原発性硬化性胆管炎 (PSC) の特殊型である限局型PSCが示唆された.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.60.1088