免疫抑制剤・抗凝固剤を内服中の肥満患者に生じた外傷性脾損傷に対して動脈塞栓術が奏効した1例

症例は56歳,女性で, 2004年10月,自動車運転中に正面衝突事故にあい,当院救急外来に搬入された.既往歴に慢性関節リウマチ, Sjögren症候群,抗リン脂質抗体症候群,深部静脈血栓症があり,ステロイド,免疫抑制剤,抗凝固剤を内服中であった,来院時,ショックを認めず,両肺野に喘鳴を聴取した.腹膜刺激症状を認めなかった.高度肥満を認めた.造影CTにてIIIb型の脾損傷と診断した.血管造影検査にて脾動脈分枝に棉花様濃染を認め,部分的脾動脈塞栓術を行った.塞栓後12日目のCTにて血腫は縮小し, 18日目に膠原病の治療とリハビリ目的に内科に転科した.受傷4カ月後のCTでは血腫はほぼ消失した.受傷後...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 67; no. 7; pp. 1680 - 1684
Main Authors 境, 雄大, 大澤, 忠治, 八木橋, 信夫
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.07.2006
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.67.1680

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Summary:症例は56歳,女性で, 2004年10月,自動車運転中に正面衝突事故にあい,当院救急外来に搬入された.既往歴に慢性関節リウマチ, Sjögren症候群,抗リン脂質抗体症候群,深部静脈血栓症があり,ステロイド,免疫抑制剤,抗凝固剤を内服中であった,来院時,ショックを認めず,両肺野に喘鳴を聴取した.腹膜刺激症状を認めなかった.高度肥満を認めた.造影CTにてIIIb型の脾損傷と診断した.血管造影検査にて脾動脈分枝に棉花様濃染を認め,部分的脾動脈塞栓術を行った.塞栓後12日目のCTにて血腫は縮小し, 18日目に膠原病の治療とリハビリ目的に内科に転科した.受傷4カ月後のCTでは血腫はほぼ消失した.受傷後1年を経過したが,遅発性合併症を認めていない.部分的脾動脈塞栓術はステロイド,免疫抑制剤,抗凝固剤投与中の重篤な患者においても安全に行いうる有効な治療法であり,血行動態が維持できれば開腹術を行う前に試みるべきである.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.67.1680