エホバの証人派信者の拡張型心筋症症例に対して無輸血で施行した僧帽弁複合体形成術の1例

症例は22歳,男性.心不全のため他医に入院,精査により拡張型心筋症,僧帽弁逆流III度と診断された.内科的治療でやや軽快しNYHA IIとなったが,僧帽弁逆流は改善せず,また,β-プロッカーの導入が困難で手術目的で当科転科となった.僧帽弁逆流の改善による左室壁運動の改善,両心室ペーシングによる左室壁運動の改善,さらに術中の判断で左室形成術も考慮し手術に臨んだ.エホバの証人派信者の症例で無輸血が絶対条件であることも,手術適応の重要な要素と判断し手術を施行した.僧帽弁複合体形成術(mitral complex reconstruction),両心室pacing generator挿入術を無輸血で施...

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Published in日本心臓血管外科学会雑誌 Vol. 36; no. 6; pp. 361 - 365
Main Authors 本橋, 雅壽, 瀧上, 剛, 安達, 昭, 松居, 喜郎, 安田, 慶秀, 佐々木, 重幸
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会 15.11.2007
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ISSN0285-1474
1883-4108
DOI10.4326/jjcvs.36.361

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Summary:症例は22歳,男性.心不全のため他医に入院,精査により拡張型心筋症,僧帽弁逆流III度と診断された.内科的治療でやや軽快しNYHA IIとなったが,僧帽弁逆流は改善せず,また,β-プロッカーの導入が困難で手術目的で当科転科となった.僧帽弁逆流の改善による左室壁運動の改善,両心室ペーシングによる左室壁運動の改善,さらに術中の判断で左室形成術も考慮し手術に臨んだ.エホバの証人派信者の症例で無輸血が絶対条件であることも,手術適応の重要な要素と判断し手術を施行した.僧帽弁複合体形成術(mitral complex reconstruction),両心室pacing generator挿入術を無輸血で施行した.左室形成術は施行しなかった.術前のエリスロポイエチンの投与,人工心肺の回路の短縮,陰圧脱血併用による回路のsize down,限外ろ過の施行および術後の造血剤の投与を必要としたが,術中,術後を無輸血で経過し,良好な経過でNYHA Iと改善,術後13日で転科となった.僧帽弁複合体形成術による僧帽弁逆流の改善が臨床症状を改善し,また,NYHA IIと比較的早期の症例に対する手術が無輸血手術を可能にした.しかし,患者は22歳と若年であり,その長期予後は慎重な観察が必要である.
ISSN:0285-1474
1883-4108
DOI:10.4326/jjcvs.36.361