上顎洞疾患に関する臨床的研究(1978~1988)
過去約11年間に本院歯科口腔外科を受診し, 歯性上顎洞炎および術後性上顎嚢胞と診断され手術を実施した症例について, 臨床統計的ならびに病理組織学的検討を行い若干の知見を得たので報告する. 症例は34例で術後性上顎嚢胞15例, 歯性上顎洞炎19例であり, 年齢別では両者共に40~49歳が最も多く, 術後性上顎嚢胞6例(40.0%), 歯性上顎洞炎5例(26.3%)であった. 術後性上顎嚢胞では副鼻腔炎の手術年齢が20~29歳の8例(53.3%)で最も多く, 手術後年数は10~19年を経過しているものが多かった. 主訴についてはいずれも疼痛, 腫脹を訴えるものが圧倒的に多く, 当院来科の動機として...
Saved in:
Published in | 医療 Vol. 44; no. 12; pp. 1229 - 1234 |
---|---|
Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
一般社団法人 国立医療学会
1990
国立医療学会 |
Subjects | |
Online Access | Get full text |
ISSN | 0021-1699 1884-8729 |
DOI | 10.11261/iryo1946.44.1229 |
Cover
Summary: | 過去約11年間に本院歯科口腔外科を受診し, 歯性上顎洞炎および術後性上顎嚢胞と診断され手術を実施した症例について, 臨床統計的ならびに病理組織学的検討を行い若干の知見を得たので報告する. 症例は34例で術後性上顎嚢胞15例, 歯性上顎洞炎19例であり, 年齢別では両者共に40~49歳が最も多く, 術後性上顎嚢胞6例(40.0%), 歯性上顎洞炎5例(26.3%)であった. 術後性上顎嚢胞では副鼻腔炎の手術年齢が20~29歳の8例(53.3%)で最も多く, 手術後年数は10~19年を経過しているものが多かった. 主訴についてはいずれも疼痛, 腫脹を訴えるものが圧倒的に多く, 当院来科の動機としては紹介が26例(74.3%)と多く, その内訳は, 歯科からのものが19例と多くを占め, 次いで耳鼻科, 内科の順であった. また, 紹介された症例のうち25例(58.2%)については, 消炎, 抜歯, 穿刺など何らかの処置がなされていた. 病理組織学所見についてみると, 術後性上顎嚢胞では上皮組織は扁平上皮が多く, 基底膜の肥厚がみられ, 上皮下組織は線維化の傾向が強かった. 一方, 歯性上顎洞炎では上皮組織は線毛上皮が多く, 上皮組織は浮腫, 浸潤の傾向が認められ, 腺組織が術後性上顎嚢胞に比べ高率に存在した. |
---|---|
ISSN: | 0021-1699 1884-8729 |
DOI: | 10.11261/iryo1946.44.1229 |