下行結腸脂肪腫による腸重積にS状結腸癌を合併した1例

症例は55歳の女性で1週間前よりの腹痛,便秘を主訴に当院受診,腹部単純X線にて大腸閉塞の疑いで入院となった.内視鏡にてS状結腸に内腔を占拠する可動性のある腫瘤を2個認めた. CTでは脂肪腫による腸重積が疑われ,手術となった.開腹すると下行結腸からS状結腸が重積しており一塊として切除,悪性疾患も考慮してリンパ節郭清(D3)を施行した.切除標本では下行結腸に多発するポリープを認め,最大径は8.5cmであった.ポリープによる重積の先進部と思われるS状結腸に径2cmの2型の癌を認めた.病理学的には漿膜下組織由来の良性の脂肪腫と,筋層に浸潤する中分化腺癌の診断であった.大腸脂肪腫は癌を合併しやすいとされ...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 64; no. 4; pp. 949 - 953
Main Authors 赤松, 秀敏, 田村, 明彦, 半田, 寛, 松田, 純一, 松井, 淳一, 伊澤, 祥光
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本臨床外科学会 25.04.2003
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ISSN1345-2843
1882-5133
DOI10.3919/jjsa.64.949

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Summary:症例は55歳の女性で1週間前よりの腹痛,便秘を主訴に当院受診,腹部単純X線にて大腸閉塞の疑いで入院となった.内視鏡にてS状結腸に内腔を占拠する可動性のある腫瘤を2個認めた. CTでは脂肪腫による腸重積が疑われ,手術となった.開腹すると下行結腸からS状結腸が重積しており一塊として切除,悪性疾患も考慮してリンパ節郭清(D3)を施行した.切除標本では下行結腸に多発するポリープを認め,最大径は8.5cmであった.ポリープによる重積の先進部と思われるS状結腸に径2cmの2型の癌を認めた.病理学的には漿膜下組織由来の良性の脂肪腫と,筋層に浸潤する中分化腺癌の診断であった.大腸脂肪腫は癌を合併しやすいとされ,本邦報告例36例中,本症例のように両者が近接していたのは11例で,うち9例は脂肪腫が癌の口側または同じ部位に存在し,慢性的な接触があったと思われ発癌に関与していた可能性が考えられた.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.64.949