食道癌手術における自己血輸血の検討

同種血輸血の輸血感染症・合併症,免疫抑制作用の回避,無輸血手術,同種血輸血の削減を目的とし,食道癌手術患者55例を対象に,自己血輸血法を行った自己血群20例と行わない非自己血群35例を検討した.入院時Hb値から食道癌では貧血症例が多いとは言えなかった. stage別比較では必ずしも進行例で貧血,低蛋白血症を認めることはなく, stageと入院時Hb値, T-P値とは相関しなかった.術中出血量は平均688ml, 1,400ml以下は92%を占めた.自己血群の70%の症例で術中輸血は自己血2単位以下であった.新鮮凍結血漿を含め同種血輸血回避率は自己血輸血の導入で飛躍的に向上した.食道癌の適正な自己...

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Published in日本臨床外科学会雑誌 Vol. 59; no. 3; pp. 610 - 616
Main Authors 小熊, 将之, 渋谷, 哲男, 内山, 喜一郎, 天神, 敏博, 大坂, 信太郎, 塩谷, 猛, 有田, 淳, 南部, 弘太郎, 田中, 茂夫
Format Journal Article
LanguageEnglish
Published 日本臨床外科学会 25.03.1998
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Summary:同種血輸血の輸血感染症・合併症,免疫抑制作用の回避,無輸血手術,同種血輸血の削減を目的とし,食道癌手術患者55例を対象に,自己血輸血法を行った自己血群20例と行わない非自己血群35例を検討した.入院時Hb値から食道癌では貧血症例が多いとは言えなかった. stage別比較では必ずしも進行例で貧血,低蛋白血症を認めることはなく, stageと入院時Hb値, T-P値とは相関しなかった.術中出血量は平均688ml, 1,400ml以下は92%を占めた.自己血群の70%の症例で術中輸血は自己血2単位以下であった.新鮮凍結血漿を含め同種血輸血回避率は自己血輸血の導入で飛躍的に向上した.食道癌の適正な自己血貯血量は800mlと考えるが,周術期合併症を併発すると同種血輸血の可能性は非常に高くなる.術後のHb値は非同種血輸血群が高値で安定し, T-Bil値は同種血輸血群が常に高値を示した.食道癌手術で自己血輸血は有用であると思われる.
ISSN:1345-2843
1882-5133
DOI:10.3919/jjsa.59.610